きらめきの里・園だより≪エピソード集≫2017~18年度 (10) 2019年2月号・3月号より
2020.04.01

臨床発達心理士 田野準子

楡の会・発達支援センターきらめきの里の園だよりに掲載されたエピソードをまとめました。上手く行ったお話が満載です。

~2018年度~

★2月号 今月のエピソード

★好い事作り療法の『極意』

楡の療育法は「好ましくない行動を好ましい行動に変える」ために“図星を言う”ことが前提です。“図星を言う”は、自分の気持ちを分ってもらえているから、話を聞くよ~(交渉に応じるよ)という、子どもの『聴く耳を作る』からです。子どもにとって好ましい事を大人がわかり易くやり易く提示、提案して、それに上手く子どもに乗ってもらおう(乗せちゃおう!)・・・これが『極意』です。
Hくん:ママは「ダメ!」って否定しない。僕の思いをわかってくれる。ママの話は聞くよ、応じるよ!
ママ:「Hは~だったね。~したら良いよ。~しよう!」って言って誘い、上手く乗せて褒めよう!
これをイメージして、大人の知恵を使って『上手く乗せちゃう技』をママやパパが身に付けスキルアップできるよう、今、そしてこれからも頑張っていきましょう!

1・「小さい優しい声で・・・」言えたA君
大人の言葉の真似をするようになったA君。最近、「おぉ!」というドスの利いた大きな声を出すようになりました。担任は「大きい声のA君、ちょっと怖いね。小さい声の優しいA君がいいな~。小さい優しい声で言おう・・・」と手本を示しました。A君は、直ぐに小さな優しい声で「おぉ」と言うことができ、担任に褒められて笑顔に・・・。「そんな大きな声出したらダメ」と言われたら、「なんでだよ!真似してるだけなのに!」と反発を招くだけ。A君は担任の言葉に聴く耳が持てているので、真似し易い好ましいお手本を示されてそれに乗って、好ましいものに変える事ができたのでした。

2・「これならいいよ」と提案されて唾吐きがなくなったB君
入園後、順番待ちの時や制止された時に床や人に向かって唾を吐いて憂さを晴らしていたB君。「そうだよね~早くやりたい!よね・・・。このタオルに唾を出していいよ。いっぱいいいよ・・・」職員に図星を言ってもらい、ダメと言われずやってもいい場所を提案されて、その提案に乗って、たっぷり憂さ晴らしできたB君は、(即日効果あり)1か月後には、唾を吐くことなく過ごすことができるようになりました。

3・『自分で!』の意識が芽生えてきたC君
棚や窓枠や、高い所に上るのが好きなC君。朝の会が始まると離席して早速棚の上に上ります。「いいよ~上っても。10上っていていいよ。待ってるからね。ゆっくり10数えるからね。1~10!いっぱい上れて良かったね。次はシール帳の時間だから自分で降りて、自分で椅子に座ろうね。」と職員に促され自分で降りたC君。すかさず、そのまま上手く椅子に誘導して「自分で降りて、自分で座れたね~カッコいい!お兄ちゃんになったね・・・」と職員は声をかけます。C君の着席できる頻度は確実にアップしています。『自分でできたね!・カッコいいお兄さん(素敵なお姉さん)になったね!』は、好ましい行動に子どもを乗せて、定着させるために、とっても有効な褒め言葉です!

★図星を言った後の提案の方法は、子どもの発達やどこまで聴く耳を持てているかによって、好きな事の利用、カウントダウン、やっても無害に、外在化etc・・・それぞれのお子さんに合わせたオーダーメイドです。親が「~したらダメだよ!」と言っているうちは、好ましくない行動が解消しない場合が殆どです。『子育て親育ち読本』には沢山のママ達の成功例も載っています。我が子にピッタリの『技』を見つけることができるはず。幸せ作りのために『読本』を活用して下さるよう願っています。

★3月号 今月のエピソード

子どもの手の届く所に壊されて困るもの、投げると危ないものは置かないというのが大前提ですが、そうは言っても人に当てると危ない物は、身の周りにいっぱいあり、子どもが『物』の本来の使い方ができるようになるまでは、放り投げる事が楽しい遊びになる時期もあります。そんな時・・・。

1・やっても無害に・・・代替品の提示で満足作り、好い事作りを!
・・・昼遊びのホール。レゴブロックのコーナーでブロックを持って放り始めたA君。それを見てM先生は直ぐに、周りを見渡しソフト積み木を持つとA君の前に差し出し「3,2,1!ソレーッ!」と声を掛け高く上に放り投げました。A君はブロックを投げるのを止めて、満面の笑顔で床に仰向けに寝て、M先生が放る、当たっても痛くないソフト積み木が高く上がっては落ちてくるのを見て楽しむ遊びを、何度も何度も繰り返してやってもらい満足し、その後はレゴを放り投げて遊ぶ事なく過ごしました。M先生はA君の好きな遊びを理解し、認めつつ「ダメ」と言わずに「これならいいよ」と代替の遊びを提示してA君の気持ちを切り替え、満足を作ったのでした。

カラーボールの活動時、楽しくて気持ちが高ぶりカラーボールを周りの人の顔めがけて投げ始めたB君。B君は近距離で投げるのでると痛いため、直ぐに職員が傍にあったボウルを差し出し「B君、ここならいいよ!ここに入れよう!」と声を掛けました。今まで何度か的当てに誘ってきているので、B君は直ぐに乗ってきて、ボウルめがけてカラーボールを投げはじめました。「ストライク!」「惜しい!」の声かけも楽しんで繰り返し投げて、満足するとカラーボールを転がす遊びのコーナーに行き、活動が終わるまで楽しく過ごしました。「投げたらダメ!」と言ったり制止することは、反発を誘うだけ。「こうやって遊ぼう!」と子どもの成長に合わせた楽しい遊びを示して誘う事が、好ましくない行動をなくして子どもの満足を作り、それが発達を促す事に繋がります。

2・声のかけ方~図星を言った後は好ましい行動の提案を!
エアポリンの活動中、エアポリンを離れて保育室の方に戻ろうとするC君。今まで、C君の図星を言い当てることはとても上手だけれど、その次の『好ましい行動作りの提案』が苦手だったお母さんが「~なんだね。そうか~。でもお母さん、C君にエアポリンの跳び方教えて欲しいな~」と自尊心をくすぐる一言。職員も一緒に「C君、とっても跳ぶのが上手になったから、先生も教えて欲しいな~」と。C君の目がキラリ!「うん!」と頷きエアポリンに戻り、お母さんと一緒に活動の最後まで楽しく遊ぶことができました。『好い事作り療法』は図星を言った後に提案の声かけをして、子どもがそれに乗って、成長に繋がる好ましい行動が出来るようにする事を目指しています。C君は色々なドキドキを乗り越えて、自分に自信を持てるように成長中。お母さんも親力アップ!お見事!

3・声のかけ方~知恵を絞って否定文ではなく肯定文でわかり易い言い方で!
「私と二人の時はいいけど、パパがいるとDが私を叩いたり引っ張ったりする。Dが崩れて私を叩きだすとパパが何か買ってくれたりするからそれもあるかな~せっかくパパがDを受け止めてくれているからパパに言いたくないけど・・・」というママの困り事に「ママに優しいDが好きだよ」とパパに言ってもらう事を提案しました。ところが・・・半月後・・・「パパは『ママを叩くDは嫌いだよ』と言って、最初はいいかな~叩かないと思ったけど、だんだんパパの気を引くために私の髪を引っ張って・・・」とのママからの話・・・。声かけをする時に『叩く・嫌い』の言葉を使ってしまうと『叩く』と『嫌い』という言葉に応じた形でパパの気をひこうとするので、好ましくない行動を作ってしまう事をお伝えして、『ママに優しいDが好きだよ』の言い方に変えてDちゃんに声かけするようにお伝えしました。

『言葉の使い方』はとても大事です。≪母「座らないともらえないよ」➡子「いいよ!座らない!もらわない!(反発となる確率大)」・母「座ったらもらえるよ」➡子「じゃ、座って、もらおう(となる確率大)」≫あなたはどちらを選びますか?・・・知恵を絞って否定語や否定的な言葉を含まない、肯定文のわかり易い言い方ができるように頑張りましょう。⇒※脳トレです!

☆彡☆彡キラリ☆彡☆彡~ママの素敵な言葉~
💛E君ママ:「今日みたいにちょっと体調悪いけどEのために頑張ろう!って来た日は、『よし!私、頑張った!』と自分に言ったりしています。母子通園は時々辛いけど、ここに来るとEが楽しそうだし、自分も楽しいし勉強になるから頑張ります・・・」
💛F君ママ:「・・・可愛いFやG(兄弟)の事、そして自分の事も信じて頑張ります!・・・すぐ不安になるけど、でも、信じる事を忘れないように頑張ります!自分の事が信じられたら今より楽になれる!そしたらGも楽になれると思います・・・」