臨床発達心理士 田野準子
楡の会・発達支援センターきらめきの里の園だよりに掲載されたエピソードをまとめました。上手く行ったお話が満載です。
~2017年度~
★7月号 今月のエピソード
1.可愛い時が、他の子より長いんだって思ってる・・・素敵なママの話
「Aは、いまだに手を繋がないし、体が大きく力も強くなって、ひょいと抱っこで移動できないから、一緒に買い物は行きたくない。行けない。カートも降りちゃうから。大変だけど、でも、末っ子がAで良かったって思う。楡に来て、上の子達への私の声掛けや対応が変われたから。・・・普通はあっという間に過ぎてしまう可愛い時が、Aは他の子より長いんだ~って今は思ってる。・・・」日々時間に追われるように、本当に忙しく過ごしているA君のママですが、我が子の発達がゆっくりであることをこんな風に捉えて、子育てしているのでした!素敵なママや家族にゆったり・たっぷり愛されてA君は成長中!
2.「できる!」と信じたらパッ!サッ!とスピード対応。成功の秘訣!
シーツブランコが苦手な通園3年目のB君。壁際に立って、ママに抱っこされみんなの様子をジーッと見ていたので「B君、シーツブランコしよう~」と誘いに行くと、その日はママも乗り気で、B君に声掛けしました。即、ホールの中央にあったマットをB君の傍に持ってきてシーツを広げると、ママはB君をパッとシーツに乗せ、サッと包みました。ママと一緒に揺らすと、B君は上半身を起こした姿勢でしたが、笑顔で楽しむことができました。「もう1回!」とシーツを広げて誘うと、B君は笑顔で自分からシーツに乗って横になり、ゆったり寝た姿勢で、楽しむことがで
きました。ママも満面の笑顔!今まで長い間、ママにたっぷり受け止めてもらい成長し、「今なら行ける!」と判断したママ!B君は苦手だったシーツブランコに自分から乗って楽しむことができました!!やったね!
3.「自信がもてるってすごい事!」信じてもらっているから、頑張れる・・・
C君のお兄ちゃんD君は、今、元気印の1年生!4年前、D君と一緒にきらめきの里に通っていたママは、「Dで苦労したけど、今は、見通しが持てるから楽・・・」と言い、C君を上手に受け止めて『好い事作り療法』を実践してくれている満点ママです。そんな素敵なママのエピソード。
・・・「ルービックキューブなんて無理!できなくてDにストレスを感じさせるだけだと思う。」と言うママに、「いや、絶対できるから!」とパパは、D君にルービックキューブを買ってきて渡したそうです。いくらやっても目標の1面が揃わず、出来ないことが悔しくてD君は泣いていたそうです。「でも、毎日、諦めずにやり続け『出来た!ママが出来ないこと、僕はできた!』と目を輝かせ、自信に満ちた表情で1面が揃ったルービックキューブを持ってきたときの事は、忘れられない・・・。自信が持てるってすごい事なんだな~って・・・。」とママが語ってくれました。『頑張れば出来るはず』と見込んだパパ・・・我が子の成長を喜びと共に感じたことでしょう!素敵なパパとママに拍手!
4.「怒らなくていいのに、怒ってごめんね」・・・
・・・「子どもは可愛いけど、育てるのは大変。この頃は反抗期で、何でも反対の事を言うし、怒っちゃいけないとわかっていてもイライラしてEの事を怒ってしまう。怒らないように~って思っているんですけどね・・・・寝顏が一番可愛いですよね。主人もEの寝顔見ながら『今日も怒らなくていいのに、怒ってごめんね』と言ったりして、Eが寝てから、『大人になれない親だね・・・』と主人と二人でEの事を色々話しているんです・・・。」と。素敵なご夫婦!!!
親は子ができて親になる訳で、子どもと一緒に親として成長です!子育ては『人』を育てる大仕事です!ずっと一緒に過ごす事ができる時間は『今』だけ・・・子どもの笑顔を励みに、二度と廻って来ない『今』、お子さんの人としての土台を築く『今』を、お子さんの思いを十分に受け止めて、親としての力をup↑して乗りきって下さいね!今、受容的な子育てをする事が、将来の苦労を必ず軽減させます。先輩ママたちの話も聴いてガンバです!
★8月号 今月のエピソード
いつもと違う場所や場面に対しては、私たち大人でも不安を感じる事があります。通園に通うお子さん達の中には、その不安がとても強いお子さんが多くいます。そこで、療育の中では、視覚・聴覚を利用して様々な工夫をし、アナウンスをして、見通しを持たせて不安を軽減し、徐々に安心を作るようにしています。『子育て親育ち読本』にも、その例が多く載っています。読本1の99ページには入学式のビデオによる予習をして上手くいった例が掲載されていますが、今回、見通しが持てない事に対する強い不安のあるK君が初めて飛行機に乗らなければならない・・・と言う状況で、K君のお母さんが、K君の安心つくりのために取り組んだ様子、その実践について、ご紹介したいと思います。
7月の旅行のために、5月の頃から、家族の協力も得て、お母さんはK君の安心つくりを一番に考え、グッズ(好きな物を利用して安心つくりをするため)を用意し、事前に写真をポスターのように貼り、それをA4サイズのファイルに纏めたり、早めに空港に行き遊ばせて発散させてから乗るように考えたり、ありとあらゆる努力をしました。・・・その結果、K君は何とか無事に飛行機に乗って目的地に着き、帰ってくることができました。その時の、お母さんの記録には、K君への愛が満ちています。
連絡帳のお母さんの筆跡をそのまま、視覚提示用のファイルはその部分のページをまとめて、8月号の号外として載せさせていただきますので、是非ご覧ください。そして、子どもの心に寄り添うこと、受容とは何かK君のお母さんの言葉から、学び、考える機会としていただければ何よりと思います。
Q:「得手を伸ばせば不得手は付いて来る」「好きこそ物の上手なれ」・・・って何?
『子育て親育ち読本』の中に、何度も出てくる言葉です。先ずは、得意なこと、好きなことを見つけてその得意なことをさせ、磨くことが大事で、それを利用する事で苦手も苦手でなくすることも可能だよ・・・と言うことです。
すいかクラスの母子でのスライムの活動日。スライムは苦手だけれど、すくったり、入れたりすることは好きなNちゃんとR君のために、担任はスライムの材料の液をすくって作るところから活動を始めました。
苦手な活動の日は、棚の隙間に避難するNちゃんも、ドロッとした液をすくってお母さんが混ぜてお玉から流れ降りる液を何度も見せてくれることに関心を示し、活動中席を立たずにずっと楽しむことができていました。気持ちが乗らないと、スライムを口に入れたり、スライムも道具も全部放ってしまうR君も、穴を空けたペットボトルが出てくると、お母さんが丸めてくれるスライムをボトルの口や横の穴に入れたり、それをまとめて出したり、棒状にしたスライムを包丁で切った時に、いっぱい褒められると得意になって何度も切ってそれをボトルに入れたり・・・時間いっぱい楽しんで遊ぶことができました。
『失敗が罰に繋がると、罰は意欲喪失に繋がり、意欲を喪失すると子どもは頑なにやりたがらなくなる。成功が褒美に繋がると、褒美は意欲に繋がり、意欲がもてればやる気がでて、もう一度やることを楽しみにするようになる。』と言う定式があります。握力の弱い子が、初めて1秒棒にぶら下がることが出来た時、「それしかできないの。」という言葉を受ける場合と、「すごい!」と心から褒められる場合とでは、その子の発達・成長は変わってしまうのです。(↑罰=とがめられたり怒られたりする・褒美=褒められる)
お子さんの得意な事、好きな事を見つけて、いっぱい褒めて、上手におだててあげて下さい。
やる気が出れば、「上手く出来たでしょ!見て!もう1回!もっとやってみるよ!」という気持ちが子どもに生まれるのです。お子さんに繰り返しやって欲しいと願うことがある時は、やり易い見本を見せた上で、愛と心からの賞賛(褒める)のご褒美をいっぱいあげてくださいね。