臨床発達心理士 田野準子
楡の会・発達支援センターきらめきの里の園だよりに掲載されたエピソードをまとめました。上手く行ったお話が満載です。
~2018年度~
★5月号 今月のエピソード
新入園の9名のお子さんを迎え、れもんクラス11名・ばななクラス8名・いちごクラス10名・すいかクラス10名・・・計39名で平成30年度がスタートしてもうすぐ1か月・・・。みんなグングン成長中です!
5月1日(火)からは、お母さん達の昼食・休憩時間が45分間になります!子ども達は、この時間にママと離れ先生やお友達と過ごす中で、様々な経験を重ね成長していきます。特に『ママと離れるのが不安なお子さん』のママは、休憩に行くときには「ママはホッペに行って来るね。」「行ってきます。先生と遊んで待っていてね」etc・・・分り易く声掛けし、休憩からの戻り時は一番にお子さんに顔をみせて「ただいま~。ママは戻ってきたよ。頑張って待てたね。えらかったね!」とお子さんを抱きしめて、いっぱい褒めてあげて下さい。この経験の継続、繰り返しが「ママはここにいなくても、大丈夫!必ず帰ってくる!頑張って待っていたら褒めてくれる!」という安心を作り、母子の関係をより確かなものにします。今年度も、素敵な『好い事作り療法』のエピソードが満載のきらめきの里でありますように・・・。
★『好い事作り療法』って何? 『図星を言う』って・・・その意味は?
楡の会の職員が実践している『好い事作り療法』(楡式療育法)は心理療法を用いた子育て法です。子どもの心に『わかってもらえている感(わかってもらえているんだと言う思い)』を作るために、『図星を言う』ことを提唱しています。『図星を言う』とは、子どもの心を推察して言い当てる事です。ママが図星を言って、子どもに『わかってもらえている感』を作ると、『ママは僕の味方・わかってくれている人だから安心。ママの言う事なら聞こう!』という『聞く耳』を子どもは持てるようになります。いつも「ダメ!」と行動を制止されていたり、子どもが思いを伝えようと頑張っても受け止めてもらえず「ママはわかってくれてない。」と子どもが思ってしまったら、子どもはママの言う事を聞こうという意欲(聞く耳)をなくしてしまいます。叱る(=教え諭す)時も、まず、図星を言って、『わかってもらえている感』を作ってから「~した方がいいよ」と提案して、やり易い、真似し易い手本(やって良い事)を提案することが大事です。この『図星を言う』は、子どもの思いを受け止める『受容』が前提で、この『受容』をベースにした心理療法を用いて、私たち職員は日々療育をしています。保護者の皆さんもお子さんと自分の幸せ作りのために実践しましょう!
具体的に、受容的な関わり方の主な技として、
1・カウントダウン ~ 我慢させずカウントで満足を作ってから、気持ちを切り替えさせる。
2・二つ先のアナウンス~ わかり易くアナウンスし、見通しを持たせ気持ちを切り替えさせる。
3・褒める・OKの声かけ~ 認められている、褒められている感(満足感・達成感)を持たせる。
4・~しようの声かけ ~ 制止や「ダメ」の声かけをしないで選択肢を用意して提案する。反発の抑制と否定されずに『自分で好い事ができている感』を育む。
5・やっても無害に ~ 「こっちならいいよ」と代替案を提示し『好い事作り』に仕向ける。
6・安心グッズの利用 ~ 安心グッズや好きな物(事)を利用し安心を作る。 (他にも色々な技がありま~す)
・・・などの方法を実践して、日々療育しています。是非、お母さん、お父さんも、職員と一緒に実践して、お子さんの成長を促していきましょう!
(発達についてのわかり易い説明と『好い事作り』のエピソーソが満載の『子育て親育ち読本』を販売しています。担任に申し付け下さるか、事務室で購入できます。お勧めです!)
★6月号 今月のエピソード 『好い事作り療法』その1・カウントダウン
新年度が始まり2ヶ月・・・子ども達は新しい環境に慣れてきて、我が子の成長を日々実感しながら過ごしているお母さんも多いと思います。タイトルの『カウントダウン』は既に療育の中でそれを利用している職員をご覧になったり、ご自身で実践してその効果を実感している方も多いと思う療法の一つです。
子どもは自分のやっている事や、やりたい事を止められると、怒ったりその思いが強くなってしまう事が多いのです。そんな時は「ダメ」「できないよ」と否定、制止せず、例えば「じゃあ(ちょっとあなたの顔を立ててあげるよ)5回いいよ~5回も!できるよ!」「5回できたら~次は~しようね」とアナウンスして見通しを持たせ、1~5(又は5~1)カウントして「いっぱい出来て良かったね~5回も!できたね!いや~良かったね!etc」とお子さんが満足できるように(満足した気持ちになれるように=満足した積もりを作れるように)上手く声かけ、その後「~して~しよう!」と次の行動を伝えます。
(※どうしても止める事が必要な行動は『やっても無害な代替行動』を提示します・・・『読本』をご覧ください)
子どもにダメ出しをしないので、安心(ママは気持ちをわかってくれている)と、満足・達成感(やりたかったことが出来た!)を作り、子どもは気持ちが崩れる事なく、ママの次の提案に応じることができることが多いのです。
子どもが折り合いをつける事が出来るようになるためには、お母さんも(状況に応じて)妥協して待つ事が大事なのです。お母さんが『好い事作り』の心理療法の関わり方ができるようになると、子育ては確実に楽しく、今よりもっと楽になります!子どもの発達がお手本の『模倣』によって促される様に、職員の『好い事作り療法』の様々な技を『模倣』して、お母さんたちも親力のスキルアップを目指しましょう!
2・3・4は新入の先生のエピソードです💛
1・子育ての最終目標は『分別ある人に育てること』:そのために、わが子を信じて・・・
ホールでれもんクラスが『親子でるるるん』のツリーチャイムの活動中に、外遊びから帰ってきたいちごクラスのA君。僕もやりたい!と、勢いよく走ってきて、れもんクラスのママとお友達の輪の間に滑り込んで座りました。先生がツリーチャイムを順番に回すのをその場所に座って待ち、3周(回)楽しみ、先生の「おしまーい」の声かけで気持ちを切替えて自分でクラスに戻る事ができました!A君のママは『Aは順番を守って終わったら戻って来る』と信じて、後ろで見守っていました。A君のママは「今はAを信じているから頑張れる」と言います。受容して子育てする事の最終目標は、分別のある人に育てる事。その土台は、今、我が子が『ママは自分の事をわかってくれている・信じてくれている』と思えるようにする事でもあります。A君のママ、今、最高に輝いています!
2・≪○新M先生の上手くいった≫
朝の会が始まる前からずっとピアノから離れないB君に、(初めから「座ろうね」と声を掛けても、B君はピアノを弾きたい!という気持ちでいっぱいだから耳に入らないなぁ)と考えて、「ピアノ弾きたいんだね。じゃあ、先生と一緒におはようの歌を弾いたら、椅子に座ろうね」と声を掛けました。沢山ピアノを弾くことができたB君は、満足して自ら椅子に座る事ができました。
3・≪○新H先生の上手くいった≫
C君が朝、暖房に上って自分で扇風機をつけて楽しんでいました。体操が始まるので、「3.2.1ジャンプしておしまいにしようね」と言い、カウントダウンと一緒にC君を抱き上げて(C君の好きな)ジャンプをすると、扇風機から離れて体操に参加する事ができました。
4・≪○新S先生の上手くいった≫
給食中、何度も席を立ち窓に上るDちゃん。何度か「ご飯食べる?ごちそうさまにする?」と声を掛けても切替えができません。そこで「10数えたら椅子に戻ろうね」と声を掛けカウントするとDちゃんは『10』上る事ができて満足した様子で、自ら席に戻り食事を続けることができました。