きらめきの里・園だより≪エピソード集≫2017~18年度 (9) 2018年12月号・2019年1月号より
2020.03.01

臨床発達心理士 田野準子

楡の会・発達支援センターきらめきの里の園だよりに掲載されたエピソードをまとめました。上手く行ったお話が満載です。

~2018年度~

★12月号 今月のエピソード

“遊び食い” “言葉の遅れを4歳で挽回した子” “やたらと物を投げる→投げ入れる”
“友達への乱暴とトラブルが通院半年で良くなった7歳児” “図星を言う”の三つの効能“
“2~3歳の頃にった乱暴が無くなった子 ”好い事作り心理療法”は我慢の発達を促します
“4歳前の子どもの自己主張” “お母さんは子どもの心の調律師” “急がば回れ”・・・

・・・気になった言葉や文はありませんか?
上記は、子育て親育ち読本Ⅱの目次から拾った、タイトル名です。

楡の持てる『心理療法的子育て法・子育ての知恵・子育てがスムーズになる方法』が満載の『読本』です。残念なことに、通園に通われている保護者の皆さんが、あまり読まれたり、購入されていないので・・・今は読む時間がない!と言う方に、今回、その内容を少しだけご紹介したいと思います。

≪読本Ⅱ 第1章 “好い事作り心理療法”の基本“図星を言う”の三つの効能 (P6)≫
 “図星を言う”は子どもに“分ってもらえてる感”を作れるのが第一の心理効果です。第二には子どもの言葉の発達を促せます。言葉は頭の中で思った事を声に出して他の人に伝える役割を持っています。思っている事を言葉に乗せる訳ですが、人には思い通りにすらすらしゃべれる人と、思い通りにしゃべることが難しい人がいます。思い通りにしゃべるのが苦手な人、つまり口下手の人が図星を言われたら「そうそう、それそれ、そう言いたかったんですよ」と思って「次からはそう言えばいいんだ」と言語学習が進むことになります。第三は、他者視点の発達を促します。図星を言われたら「あっそうなんだ。自分は人からそう見られているんだ」と思う時がある筈です。他人にどう見られているのかの気付きは自分を外側から見る練習に成っています。

自分を外側から見る能力の発達は自分で自分に言い聞かす能力、即ち我慢の発達を促します。多くの4歳児には我慢する智恵が備わります(読本Ⅰ第1章第5節「我慢 自己説得 反抗期が終わる」参照)。
自分を外側から見ることを換言すると他者視点と言い、他者視点とは他人の立場で物事を考える事で、例えば「○○君なら~と考えるだろう、□□君なら~と思うだろう」と推論する事です。自分で自分の事を考える事は、自分を外側から見て考える事に相当しますから、他者視点は自己の対象化とも言えます。他者視点も自己の対象化も思春期の子の自分見つけ(読本Ⅱ第9,10章)には、必須の心理過程です。
“図星を言う”は、分ってもらえている感、言葉、他者視点、の三つを促進します。

≪読本Ⅱ 第5章 困っていたけど良くなった事例“やたらと物を投げる→投げ入れる”(P51~52)≫
 発達の遅れのある3歳児Au君は何でも物をあっちこっちに投げ、やらせないと酷く怒って大変という事で困られています。お母さんには以下のように説明しました。
 Au君は今、物投げに凝っていて、投げるのが面白くて投げるのが目的なのです。物投げの次の発達段階は投げ入れるです。投げるが目的から入れるが目的に進歩します。
 お母さんはAu君が投げた物を大きめの箱とか缶でキャッチして、キャッチできたら「入ったよ」とか「ストライク」とか言って、投げた物が入った事をAu君に大げさに見せ付けてください。始めのうちは、本人は投げ入れるつもりはなく、ただ投げているだけですが、入った場合の楽しさをお母さんが派手にアピールしていると、段々に入ったから面白いという気持ちが湧き上がります。そうするとやがて投げ入れたいという欲求が生じ、投げるから投げ入れるというふうに目的が変わって、投げて入れる、投げて当てるというゲーム感覚が芽生えて来て、やたらとあっちこっちに投げるのが無くなります。
 1か月後:外れはありますが、箱に投げ入れようとするように成りました。玩具のお片付けも「入れて」と言いながら持たせると、玩具箱に投げて入れるようになりました。

※読本は、全職員の教則本であり、保護者の皆さんには、最良の子育ての指南書となると思います。是非、お手元に置いて読んで、子育てに役立てて頂きたいと願っています。

★1月号 今月のエピソード

先日、NHKEテレで『すくすくアイディア大賞』という子育ての番組をやっていました。子育て中の困り事を、こんなやり方・アイディアで上手く乗り切った~という実例が紹介されていて、楡の読本で説明、紹介されている心理療法(外在化~読本Ⅰ58・82P、読本Ⅱ81P他~の説明)と同様の方法で子育ての困り事を上手く解決しているママやパパの対処法(声かけや関わり方)が紹介されていました。
「楡に通園しているのに、家での我が子の問題行動が変わらない!通う意味ないんじゃない?!」・・・と思っているパパさんがいたら・・・心理療法である楡の療育法を信じて、受容をベースにしたお子さんへの関わり方をご自宅でも実践すれば、必ず変わります!人は、自分の気持ちをわかってくれる人の言葉には、耳を傾ける・・・聞く耳が持てるようになるからです。それは、老若男女・・・大人も子どもも同じ・・・。
親子が楽に幸せに過ごせる『好い事作り心理療法』の効果を“今”実感して頂けるよう願っています。

1・満足を積極的に作る・・・急がば回れ・・・
 給食後、ホールに円く敷いてあるマットの上を走り回っていたAくん。そこへママが「帰るよ~」と言いながら来ると「いや!帰らない」とAくん。「早く帰らないとお兄ちゃん帰ってきちゃうから!」「いや!」二人で押し問答。そこで職員が「Aくんまだ遊んでたいよね~。ママ、もう少し遊んでから帰るから待ってて」と代弁し、「先生といっぱい回ろう!10回!OK?」「よーし!スタート!もっと速く頑張れ~4回~まだまだ~」・・・職員はAくんと一緒に全速力で走り回りました。Aくんは6周目で疲れて走るのを止めました。「え~もういいの?いっぱい走って満足したね~。いっぱい遊べて良かったね~。じゃあ、お兄ちゃん帰ってくるから、靴下はいて、ジャンバー着てママと帰ろう!」と職員が声かけると、Aくんはすんなり帰り支度を始めました。「さすがAくん!もうジャンバー着てる!お兄さんになったね~」とAくんは褒められるおまけ付き。
職員がママに「急がば回れってね。・・・まずは子どもの思いや要求に応じて、それから『いっぱいできて良かったね~満足したね~』って満足の気持ちを作って、こちらのペースに乗せちゃう。面倒かも知れないけど、これが、親も子も楽に過ごすための早道!」と耳打ちすると、ママは納得の表情。ママもAくんも、笑顔で帰りました。上記の様な場合、ほんの3分位・・・子どもに3分間応じて付き合い、待ってやり、満足を作る声かけをすれば、だだこねもなく、自から行動してくれる・・・親が子を怒りつけてだだこねされながらイライラして帰らなくて済む・・・楽ですよ~。楡の心理療法を理解して上手く実践できる様になるか否かで、今、そして・・・これからの子育ての『楽』度合いが大きく変わります。

2・「今、頑張ってるんだ。応援してね!」・・・それで伝わる・・・という話
時々、ママたちから通園に通うお子さんのお兄ちゃん、お姉ちゃん達のお友だちが「どうして◯くんの弟(妹)ちゃんとお話できないの(歩かないの)?」と尋ねられた時、何て答えたらいいんだろう~という質問を受けます。それぞれ状況が違うでしょうから、他の好い返し方もあるのでしょうが・・・最近は、数年前通園にいたBちゃんのお兄ちゃんのピュアな言葉(読本Ⅲで紹介)をお伝えしています。
3歳のBちゃんはバギーに乗ってママとお兄ちゃんと公園に行きました。そこで遊んでいた子に「なんでこの子、歩かないの?」と、Bちゃんのことを聞かれました。ママがとっさに答えられずにいたらお兄ちゃんが「Bちゃんはね、今は歩けないけど、今練習しているからね。応援してね!」と答え、その場でその子は納得し・・・というお話です。(是非読んでいただきたい話です!)Bちゃんのお兄ちゃんの言葉を借りて「どうして話せないの?」とお友達に尋ねられたら「今は話せないけど、頑張って練習してるんだ。応援してね」と返せばいいのでは?と・・・。お友達の感じた事実は受け止め認め、お友達を「頑張ってね」と応援したい気持ちにさせるような声かけです!(心理的効果大!)

他にも素敵な説明や返しの言葉があるかもしれません・・・上手くいった声かけやエピソードは、どうしたらいいんだろう~と悩む他のお母さんたちの悩みの解決の手助けになります。お母さん同士が「うちは~して上手くいったよ~」と気軽に情報交換できるように願っています。