きらめきの里・園だより≪エピソード集≫ 2019年12月号より
2020.11.26

保育士 阿部 智恵美

★★★今月のエピソード★★★

1.「僕持って帰りたい!」 → “こっちならいいよ”の積み重ね

園で上手に作れたブロック作品を壊したくない、取っておきたいという思いで、担任にそれを「持って帰ってもいいですか」と確認する事が続いたAくん。

ステキな物を持って帰りたい気持ちを「持って帰りたいんだね」と代弁し「楡のブロックはみんなの物だから持って帰れないんだ。代わりに先生がAくん専用のを作ってあげるよ。Aくんが作った物はクラスのカゴにしまって、こっちなら持って帰ってもいいよ」とAくんが持ち帰りたい物の代わりになる物を折り紙や新聞紙で作り、持って帰れるように提案し続けました。

・・・2週間後。Aくんは、担任が新聞紙で作った代替品を持って、笑顔で帰る事が出来るようになりました。

2 .「お友達に貸したくない!」 → “こっちならいいよ”の提案

登園時、園バスの中で自分の大好きなポケモンの指人形で職員と戦いごっこをするのが好きなBくん。

楽しく遊ぶ様子を見て他のクラスの友達も「貸して」と指人形に手を伸ばしましたが、Bくんは「ダメ!これはBの!」と貸してあげる事が出来ません。

そんなBくんの様子を見て職員は「そうだね。Bの大事だもんね。CくんはBの遊びが楽しそうだなぁ、一緒に遊びたいなぁと思ったんだって」とBくんの気持ちを代弁しつつ、友達のCくんの気持ちも言葉にして、Bくんに伝えました。

登園後、クラスの棚にしまってあった指人形の袋をBくんに見せ「今度お友達が貸してって言ったら、これを貸してあげたらいいんじゃない?」と提案すると、Bくんは「それがいい!」とニコニコ笑顔で応えてくれました。

・・・その日の帰り。Bくんと職員がポケモンの指人形で戦いごっこをしていると、前に座っていた子がBくんの指人形に手を伸ばしました。

するとBくんが「これはBの。こっちならいいよ」と袋の中の指人形を差し出し、みんなで楽しくバスの時間を過ごす事が出来ました。今では、何か欲しがっている子の様子を見ると「ぬいぐるみが欲しいって言ってるんじゃない?」とお友達の気持ちを代弁して職員に伝えているBくんです。 

※「今度~貸して・~言ったら~したら良い」は、未来つまり予定を提案して、それに見事に乗せると言う事です。未来行動を作って実現に導く事ができてvery good!

※「縫いぐるみが欲しいって言ってるんじゃない?」は他者の心を読めているという事なので、空気を読めるように育っていると言う点でもvery good!(石川Drより)

3 .「今、トイレに行きたくない!!」 → 「(○と△と)どっちにする?」の提案

昼食後、ホールで遊んでいる時にトイレに誘うと「ヤダ!絶対行かない!」というDくん。

遊びが一区切りついたタイミングで誘ってもなかなかトイレに行かず、我慢してお漏らしする事が続きました。

そこで担任は、Dくんが自分で選択できるようにして「トイレに今行く?それとも体操終わってからにする?」と声掛けました。

・・・Dくんはちょっと考えてから「体操終わったらにする!」と言い、ホールで沢山遊んだ後、体操が終わると、スムーズにトイレに行く事が出来ました。

今では、担任がクラスの子をトイレに誘っているのを見ると「体操終わったらトイレ行く!」と自分から担任に伝える事が出来るようになりました。

※「今に生きる」から「未来に生きる」を作れた。つまり「~たら~する」という二段階の未来記憶を作り、忘れずに実行する知恵が育った事になります。(石川Drより)

4.絶対紙パンツがいい!布パンツは履きたくない!

トイレトレーニングは完了しているEくん。

お母さんは布パンツを履いて欲しいと思っていますがEくんは「紙パンツがいい!」と布パンツを履く事を拒否しています。

「紙パンツだと汗かいたらお尻かゆくなるよ。こっちの方がいいんじゃない?」と担任が促してもEくんは「ちびったらヤダから紙パンツがいい!」と布パンツを履こうとしません。

もしかすると、濡らしてしまうと履く布パンツが無くなってしまう事が 布パンツを履かない!と言う不安かもしれない!と担任は気が付いて、Yくんのトイレに置いてある着替えカゴいっぱいに貸し出し用布パンツを詰め「パンツ沢山あるから、濡れても大丈夫だよ。濡れたら着替えればいいんだよ」とYくんにカゴいっぱいのパンツを見せると安心して布パンツに履き替える事が出来ました。

今では自分のお気に入りのキャラクターの付いたパンツが2枚ある事を確認して、お気に入りのパンツを履く事が出来るようになりました。

5.怒るのではなく、言葉にすると伝わる

「大人にこうして欲しい」という思いが強いYくん。

朝のホールで体操の時間に体操ではなく「部屋に行きたい」と言い、部屋に居た担任に「紙で剣を作って」と言いました。

Yくんは自分で物を作る力があるため、大人に全て願いを叶えてもらうのではなく、自分で出来るところは頑張れるようになって欲しいと思い「紙あげるよ。自分で作ってごらん。難しかったら先生手伝うよ」と伝え、側で見守る事にしました。

担任の提案に怒り自分の頭を叩き要求を通そうとするYくんに「難しかったかい?こうやったらいいよ」とYくんが頭を叩いていた手を取り、手を添えて一緒に作っていきました。

完成すると満足そうな表情のYくんに「さすがYくん。とっても上手にできたね。強そう!」と自分で出来た事を褒め「みんなが体操から戻るまで沢山遊ぼう。戻ってきたら片付けようね」と終わりを伝えて、Yくんが満足するまで遊ぶ事にしました。

体操の時間に制作する事を続けているうちに「出来ない!」と怒って自分の頭を叩くのではなく、言葉で助けを求めたり、自分で作りたい物を作ってみるようになりました。

部屋でホールの様子を聞いているYくんの姿を見て「ホールの体操楽しそうだよ。先生お部屋で練習するね。Yくんも一緒に踊ろうよ」と伝えると、最初は「やらないもーん」と言っていたYくんですが、徐々に部屋の中で体操を楽しめるようになり、今ではホールでもみんなと一緒に体操を楽しめるようになりました。

※代替品つまり代理物で納得できるように乗せる、達成感満足感を作れると言う事は、象徴行動のレパートリーを広げ育てた事に成るのでvery good! 人間の人間たる所以は象徴行動できる事だからです。(石川Drより)