(48)楡の会発達研究センター報告、その48(2020年12月)
2020.12.22

言葉の遅れのため3歳4歳で来院し挽回した20人 石川 丹

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楡の会発達研究センター報告、その48(2020年12月)

 

言葉の遅れのため3歳4歳で来院し挽回ばんかいした20人

 こどもクリニック名誉院長
石川 丹

I.はじめに

言葉の遅れを心配されて3歳以上5歳未満でクリニックを初診した子の中で通院治療によって遅れを挽回した20人(男児14人女児6人)を紹介します。
筆者方式の言語療法は、子どもの言葉の発達段階に応じてその次の発達段階に進めるように促す言葉掛けの方法を、受診毎に親御さんにお教えする形に成っています。
VI.の20人の紹介文には言葉の発達を促す様々な方法が“~~~~”の標語で示されていますが、メインは“図星を言う”です。標語については、こどもクリニック通信2号「言葉遅れのある子の言葉を促す方法、教えます」1)、を参照して下さい。

II.言葉の発達の順序

幼児期の言葉の発達はおおむね、一語⇒二語文三語文⇒助詞⇒比喩ひゆ「~みたい」⇒叙述・今を語る⇒順序を語る「~したら~する」⇒疑問詞「何、誰、いつ、どこ、どっち、どうして、なぜ」・比喩「例えば」⇒仮説・自問自答⇒過去の出来事経験を語る⇒自作自演の一人芝居語り⇒思い出話に花が咲く、です。
多くの子は2歳半を過ぎると、「あの白い犬、小さいのは赤ちゃんだね」「あっ、チョコだ、ケーキもある、美味しそう」「お姉ちゃんが縄跳びしてる、上手だね」など今見ている事象を語る、あるいは「これをこうして、次は~」「蹴ってゴールするから見ててね」「ママがお肉食べてる、僕も食べよお」など自分ないしは他人が今やっている行為を実況中継するように語る叙述が急激に増え、親は「良くしゃべるように成った」と実感します。この時期を、言葉の爆発期、と言います。
ですから、3歳過ぎても言葉が増えないと心配されるのは当然です。
が、言葉の発達段階の次の発達段階の言葉を促すような言葉掛け、つまり手本を示せば言葉は進歩発達し易く成ります。その結果が20人です。
人生マラソンです。スタートダッシュする人、スロースターター、マイペースの人、のんびりタイプ、フォームの綺麗きれいな人、など色々です。いずれにしても親はコーチです。親の適切なコーチングのもとに大人になるのが子どもです。
20人は挽回が急に早く成った子、ゆっくりだった子、色々でした。

III.ごっこ遊びの発達順

遅れている言葉を挽回できるかどうかの指標である(これについては、発達研究センター報告41「3歳前は言葉が遅れていたけれど“図星を言う”など楡式言語療法で良く成った子ら49人」2)をご参照下さい)ごっこ遊びの発達順は多くの子の場合、1歳に成った頃から振り、2歳頃には見立て、3歳に成る前頃以降成り切り、です。
ですから、3歳以降のごっこ遊びは振りと見立てと成り切りで成り立っています。
3歳中頃から5歳頃には成り切りのレパートリーと台詞せりふが豊富多様に成ります。
成り切りは当初犬猫など動物や汽車飛行機など乗り物に成り、次いでアンパンマンやプリキュアなどキャラクターに成り、その後は父母園の先生など人に成ります。
成り切りの初めは自分一人ですが、父母や仲間と一緒にするように成り、ファミレスごっこではお客さんに成ったりウエイトレスに成ったりの役割交代をし、次いで相手に役付けしたり演出するように成りコミュニケーションの練習に成っています1)。

IV.言葉を発する際のブローカ言語運動中枢の働き

人は誰でも言葉を発するに当たって、先ずは前頭葉で思います。この段階での思いは何となくの思いで言葉に成っていない思いです。
これを心理学では表象ひょうしょうと言います、科学一般では創造あるいは想像と言うでしょう。英語ではimage、英和辞典では心象しんしょうないしは心像しんぞうと訳されています。
脳をコンピューターに例えると、前頭葉で創出された表象、創造つまり情報は左のこめかみの内側にあるブローカ言語運動中枢と呼ばれる脳の部分で言語化され、言語化プログラミングが成されます。そうしてプログラム通りに口と舌が動かせれば思い通りにしゃべれる事に成ります。
言葉を発すると言う事は“思いを思い通りに言葉に乗せる”“表象の言語化”と言う言い方ができます。人は自分の表象を言語化して初めて自らの表象がどんなふうであるかに気付くと言っても良いでしょう。
ですから、言葉の遅れのある子はブローカ言語運動中枢での言語プログラミングが上手うまく行ってない子と言えましょう。
言葉を発する前に「あのね、あのね」とか「えっとね、えっとね」とつぶやく場合は言語プログラミングに時間が掛かっている状態と言えましょう。

V.“図星を言う”が親(大人)による子どもへの言語療法の基本です1)。

“図星を言う”言語療法とは、子どもが言おうとしている言葉、子どもに言って欲しい言葉、子どもの感情気持ち意図、を親(大人)がズバリ代弁し言い、つまり図星を言い当てて子どもに聞いてもらい、それを子どもに真似まねしてもらって結果的に子どもが言葉を言えちゃうように仕組む事です。
「言えちゃった」と思えば「僕(私)って結構言えてるじゃん」と自信が付きます。自信が付けば次にまたしゃべる時の意欲が増し、ブローカ言語中枢でのプログラミングがスムーズに成りましょう。
図星を聞いた子にとって図星は手本に成り、その手本は図星であるために真似し易いのでスーッと真似した結果言えちゃったと言う事に成ります。
学ぶには必ず手本や例題が必要です。そもそも学ぶと言う言葉の語源は真似るですから、真似し易い手本が示されれば学びのスピードは上がります。
例えば、3時におやつを欲しがっている様子だったら、親(大人)が「おやつね」と言えば、子どもは言いたい事の手本を示された事に成るのでそれを直ぐ真似して『おやつ』と言えちゃう事に成るのです。
その他、子どもが楽しそうに遊んでいたら「楽しい」、怒ってたら「怒ってる」、悲しそうに泣いてたら「悲しい」、悔しそうに泣いてたら「悔しい」、足をぶつけたら「痛かったね、痛いの痛いの飛んでけえ」、寒そうにしてたら「寒いね」、何か食べたそうだったら「お腹、空いたね」、モジモジしておしっこ行きたそうだったら「おしっこだね」などと代弁して言うのが“図星を言う”です。
以下17番目のY君の母に”図星を言う”をお教えした後の再診の際に、母は「言われた事をしたら笑っちゃうくらい良く成り、保育園の事を時系列で話せるように成りました。普段の生活でもやれる事が増えてびっくりしてます」と笑顔でおっしゃったのは象徴的でした。

VI.20人の紹介

1.3歳0ヵ月R君
言葉は「Rバスのりたい」「ママえり(叔母の名)ブーブ(ママおばさんの車だ)」「これ何?」「おわったら~」ですが、助詞がまだです。不安な時は「だいじょうぶだいじょうぶ」と自分を励まし、ごっこ遊びでは赤ちゃん役が出来ます。
母には上述のブローカ言語運動中枢機能を説明し、“図星を言う・助詞が入った書き言葉での言葉掛け・役割交代の促し”1)をお教えしました。
3歳1ヵ月
一緒を意味する助詞「と」と方向を表す「に」が出て来ました。成り切り遊びでは「お姉ちゃん赤ちゃんね」と言葉で役付けするように成りました。
3歳2ヵ月
急に増えて「パパの車で一緒にお買い物行こう」と助詞「の」「で」「に」が入った多語文を話し、「~みたい」と直喩ちょくゆを言え、「これは~でやったよ」と論理的に言うように成りました。
言葉の発達を次の発達段階に促すために母には“お話しタイム” 1)を説明しすすめました。
3歳3ヵ月
「Rの病院終わったらお姉ちゃんの歯医者さんに行って帰る」と予定行動を述べ、「もしかしたら~~」と仮説を立てる言い方も可能に成りました。
3歳6ヵ月
「ピンクの薬使ってうんち沢山出たね」と下剤の効果を語りました。
3歳8ヵ月
就園して「今日は~君とブロックで遊んだよ」などと最近の経験を色々語って聞かせてくれるように成りました。
母には、幼児が過去の経験の思い出話ができるようになるのはおおむね4歳過ぎですから、もう言葉の遅れはなく成りました、と告げると母は納得、卒業としました。

2.3歳0ヵ月Re君
「あそこ」「ここに」「これは?」「先生おはよ」「パパはお仕事」「ママは先生とお話し」と三語文と助詞が出ています。「ごしたま(ご馳走様)」「ドンもん(ドラえもん)」「ヒマヒンゴ(フラミンゴ)」などRe君語があります。
尚、Re君語とは普通の人が言ういわゆる宇宙語の事ですが、筆者はRe君独特の創造性を発揮した日本語の言葉とは違う独創的な言葉と高く評価しているため、Re君に敬意を表してRe君語と名付けました。
詳しくは、発達研究センター報告42「R君の“その子語”~R君語から日本語への発達過程」3)をご参照下さい。
成り切り遊びではエプロンしてお母さんに成って包丁持って料理して「はい、どうぞ」とすすめます。
母には発話量は少ないが質は高いと説き、“図星を言う・Re君語辞書を作る”を解説しました。
3歳2ヵ月
言葉は急に増え、「これはReのおしり(お薬)じゃないよ、こっちがReのおしり(お薬)だよ」と長文を発し、「~のせいで~くっ付いちゃったよ」と因果を述べました。
3歳3ヵ月
どんどんおしゃべりが増えましたが「あのねえあのねえ~」「うんとねうんとね~」が目立つとの事で、「知恵が進んで表象が豊かに成ったけどブローカ言語運動中枢での言語化プログラミング1)が追いついてない状態です。ですから、“図星を言う”を引き続きすればブローカ言語運動中枢でのプログラミングがスムーズに成って言葉がスラスラ出て来ます」と言って母を励ましました。
3歳4ヵ月
母は「スムーズに言葉が出るように成り安心です」と述べました。
その後1年半再診ありません。

3.3歳1ヵ月Y君
「ママこっち」と二語文までですが、ごっこ遊びの発達は順調で父に剣を持たせて戦いごっこをします。
母には“図星を言う・図星を言ってから叱る・助詞の言葉掛け”1)をお教えしました。
3歳2ヵ月
形容詞代名詞が増え、聞き分け良く成りました。
3歳3ヵ月
「次ママの番」と三語文を発しました。次の段階の発達を促すために“叙述のし合いっこ”1)をおすすめしました。
3歳4ヵ月
「~ないここあった」など叙述が増え、「ママ大きいパパもっと大きい」と比較概念を会得しました。“お話しタイム”1)をおすすめしました。
3歳5ヵ月
「骨あった硬い」「先生見てバスいない」など良くしゃべるように成りました。
3歳8ヵ月
会話らしく成って「Y一人で来た」「~ちゃんが~した」など過去を語るのが増え、「Yの勝ち、ママの負け」と勝ち負け概念を理解しました。平仮名は全部読みます。
3歳10ヵ月
「~みたい」と比喩を発し、「ここ行った事ないから行こうね」と理由付けができました。
4歳0ヵ月
「Yがバスの運転手に成ったらお爺ちゃんとパパとママ乗せて上げる」と仮説を含めて長文を言いました。「~クイズ」と言って動物の真似して「これ何だ」と問題を出すように成り、『母が誰だったけ』と分からない振りをすると「~ちゃん」と教えてくれました。
4歳2ヵ月
「もしかして~に成るかな」と仮説語を発し、「朝ね、先生が~で~が熱があるからお休みだったの」と出来事を、「そのあとトイレ行って~」と経験の経過を語れるように成りました。
よくよくしゃべれるように成ったので卒業としました。

4.3歳1ヵ月Yu君
「きゅうきゅうしゃ行った」「でんで(電車)いる」「ニューニュー(牛乳)のみたいねえ」「これなるに(なあに)」とY君語が入った二語文までで助詞は終助詞「ねえ」のみですが、「なあに」の疑問詞を発しています。ミニカーをロケットに、洗面器をハンドルに見立てます。
母に“図星を言う・図星を言ってから叱る・書き言葉で話し掛ける・Yu君語辞書作り・成り切り遊びの手本を示す”1)をお勧めしました
3歳2ヵ月
言葉が増え、「もんぶ(おんぶ)して」「あーちゃん(母)待って」と助詞「て」が出、「おったん(父)どこ行った」と場所の疑問詞「どこ」が入った三語文を発しました。母が成りきり遊びの手本を示すように改めて説きました。
診療終了時、母が「終わったよ」と言った所、児は『終わってない、遊びたい』と言葉で抵抗しました。これは言葉の進歩と評価できます。
3歳4ヵ月
成り切り遊びをするように成り、戦隊ごっこをして変身します。
言うことを聞かなくて困っているとの事なので“良い子のYuに成ったね・良い子のYuどこ行った?”(これについては、こどもクリニック通信26号「良い子の○○どこ行ったあ?」4)、発達研究センター報告40「自由奔放傍若無人だったけれど我慢できる良い子に成れた子36人」5)をご参照下さい)をお教えしました。
3歳5ヵ月
「虫飛んで行った」と叙述し、「お父さん手痛いの?」と気遣いました。
母が「良い子のYu君ならこんな事しないよね」と言うと聞き分け良く成り、「今日のYu君良いYu君だよ」と自ら言って良い子意識4)が発達しました。
3歳9ヵ月
「帰らないよ、もうちょっとしてから帰る」「お父さんお風呂できたよ、一緒に入ろう」
など多語文がすごく増え、「これすごいおいしそう」と比喩も発しました。疑問詞「なぜ」も使います。成りきり遊びでは母に役付けし、「~~して」と演出します。
母に“お話しタイム”1)を薦めました。
3歳10ヵ月
“お話しタイム”は毎日し、二択で訊くと答えます。
4歳
会話がかなり成立します。絵本を自分で読むと言って言葉とジェスチャーで表現します。
4歳2ヵ月
母が「カレーの色は何ですか?」と訊くと考えて答え、「今日~だね」と幼稚園の行事予定を言ったら、『今日はそれないよ。今日はリズム体操ある日だよ』と訂正して来ました。トランプでばば抜きします。
4歳4ヵ月
ペンギンのぐるみに「ペンギンちゃん何食べるの、僕もカレーがいいよ」「ここは海の上でここから落ちたら死んじゃう、あそこは陸だよ」など話し掛けます。
4歳8ヵ月
尻取り遊びに応じて答えます。
4歳11ヵ月
「~はこう成ったらどうする?」と仮説を立てて自問し、都合悪くなると屁理屈へりくつを言います。母に尻取りを仕掛けて来ます、文字は読めませんが絵本を読んでくれます。トランプで負けると泣きます。
5歳1ヵ月
幼稚園の友達の事をいろいろ教えてくれます。
5歳4ヵ月
幼稚園の出来事報告が詳しく成りました。母子で塗り絵をしたら「僕はこっちやるからお母さんは~しなさい」と指導して来ました。自分の名の文字を素早すばやく見つけます。
2ヵ月後の再診無く、その後1年半未来院です。

5.3歳2ヵ月女児
「これ使っても良いよ」「ちょっと大事」「いちにいさんしいする?」などで多語文がまだ少ないです。「お母さんバーバパパみたい」と比喩は言えています。
成り切り遊びでは図書館の貸し出し係に成って判子に見立てた物で押して本を手渡します。
“図星を言う・図星を言ってから叱る”と“二つ先のアナウンス・カウントダウン(これについては、こどもクリニック通信8号「『落ち着き無い衝動的』への対処法、教えます」)6)、をご参照下さい)”を父母に説きました。
3歳6ヵ月
「今日はブランコした」「えっとね、~ちゃんと遊んだ」と過去を語るように進歩しましたので、父母には過去の思い出話が詳しく成るように促す方法である“お話しタイム”1)を勧めました。
3歳10ヵ月
おしゃべりがすごく増えました。
4歳
「~したらダメなんだよ」と弟に説教しました。
母に怒られて「もうお母さんの言う事聞かないから」と口答えをしました。これはピンチの時にすねるいじける形で身を守ろうとするコミュニケーション技術の表れですから、しつけの点では好ましくありませんが、コミュニケーション能力の発達と言う点では評価されます。
4歳4ヵ月
ごっこ遊びで仲間に役付け演出できるように成りました。
4歳10ヵ月
言葉のやり取り、会話が増えました。
5歳1ヵ月
「~先生と発表会の練習した」「~君に意地悪された」と過去を報告するのが増えました
5歳4ヵ月
「~ちゃんがいやな事言った」と言うので母が『どうして?』といたら「パズルしてたら、このパズル違うよって言った」と説明できました。
父母も言葉の心配は無く成り、卒業となりました。

6.3歳2ヵ月女児Sちゃん
「保育園行かない」「ママ仕事」「アーちゃん遊ぼう」「これ見たわあ」など二語文まで、「わし(私)」「センセブン(セブンイレブン)」「ぶび(指)」「赤いととり(赤い鳥)」「ごくえん(保育園)」などSちゃん語が目立ちます。成り切り遊びでは保育士に成って人形のお世話をします。
母に“図星を言う・Sちゃん語辞書作り”1,3)をお教えしました。
3歳4ヵ月
大分だいぶ長くしゃべるように成りましたが、Sちゃん語が今一通じない場合は叫んで意志を通そうとします。健気けなげです。
3歳7ヵ月
対等な会話が出来ます。ごっこ遊びも進歩して一人何役もやって一人で会話しています。「お父さんとママと3人で行った」と過去を語りました。“お話タイム”を勧めました。
3歳9ヵ月
「今日どこ行く?セイコー?ジャスコ?」と疑問詞を使いました。
4歳0ヵ月
母が新聞を見ながら食事した時に「ママごはん中」と注意されました。「どこ行く?」「何?」「~の後は?」など矢鱈やたらと訊いて来ます。質問ブームは4歳児が良く通る道ですからしっかり答えて下さい、と母にお願いしました。
4歳3ヵ月
「字を書く」と言って横一列に記号を書きます。
4歳6ヵ月
母が「腰が痛くてお弁当作れない、給食にしてね」と言ったら『いや』と答えた後で直ぐに『ママ大丈夫?給食でいい』と母を気遣った上でノーを訂正し、見事みごとに謙譲精神を発揮しました。
「鬼が来て泣いちゃった」「新しい先生入って来て可愛いから好き」など保育園での出来事経験を語るのがすごく増えました。先生に何で怒られたのかの説明もできます。
4歳8ヵ月
「えーっとね、うんとね~」とどもる事があります。母には「記憶力が良く成ってお母さんに教えて上げる事が増えたので、ブローカ言語運動中枢でのプログラミングに時間が掛かるように成ったからです1」」と説明し、“図星を言う”を続けるように説きました。
4歳10ヵ月
吃りは無く成りましたが、「どうぶ(道具)」「ヒナモン(シナモン)」「パンカイ(乾杯)」などSちゃん語がまだあります。
5歳9ヵ月
字を読むように成りました。
6歳6ヵ月
うるさい位良くしゃべり、普通に話せています。
7歳0ヵ月
小1に成って3ヵ月、心配は特になく通院終了としました。

7. 3歳2ヵ月男児
「おとうしゃん、お風呂行った」「何だそれ」「こっち」「違うよ」。疑問詞を使っていますが言葉数は少なく、助詞は終助詞のみです。成り切りは声を低くして父の振りをします。
父母に“図星を言う・図星を言ってから叱る・成り切り遊びの促し”1)をお教えしました。
3歳3ヵ月
「お父さん、雨降って来たよ」「こっちが~、これは~」「外が暗い、恐いね」と主格の「は」「が」が出ました。
3歳5ヵ月
「~みたい」の比喩が出、「危ないよ」と抽象語を言いました。「1、2、3~6」と数えます。
3歳6ヵ月
「今日ね、~だった」と過去を語りました。“お話タイム”を薦めました。
3歳8ヵ月
会話が増えました。
3歳10ヵ月
「あれかなあ?」「変じゃない?」と疑問を表出して考えている様子です。「~ちゃんがお休みだった」「~君に叩かれた」「今日ミッキーマウスのパズルした」と保育園の様子を色々語ります。
4歳1ヵ月
泣いている子を見て「何で泣いてるんだろう、保育園いやなのかなあ?」「お母さん見なかったの?明日だね」「早く遊びたいなあ、待ち遠しいよね」など長文に成りました。
4歳3ヵ月
妹に「早く大きく成ってね」と励ましたり、面倒をよく見ます。
4歳6ヵ月
「今日、どこ行くの?」と予定をよく聞いて来ます。「お母さん遅いよ」と小言を言いました。「ウンチ」とよく言うとの事で『4歳台の子は好ましくない言葉にはまる事があります。ブラックユーモア、ギャグと思ってあしらって下さい』と父母に説明しました。
4歳10ヵ月
友達の家からスーパーボールをもらって来たはずなのに、「どうしたの?」とただすと『お店で買った』と嘘をきました。「おいしかった?」とくとふざけて『おいしくない』と言います。父母にはこれらも4歳台の子が発揮するブラックユーモアの言語的コミュニケーションですと説きました。
「お片付けだよ」と指示したら『分かんない』ととぼけました。
5歳
絵本を見て「これ何て書いてあるの?」と訊いて来ます。「ありがとう」と書けます。物音が聞こえた時、「あれっ、もしかしたらお化けかな?」と仮説を立てて考えました。
5歳8ヵ月
2歳の妹を評して「最近、~ちゃん、おしゃべり上手に成ったよね」とお兄ちゃん風を吹かせました。父は「前よりずっと困り感はなく成りました」と述べました。
5歳8ヵ月
就学後半年、担任との懇談で「比較的大丈夫です」と言われました。卒業としました。

8.3歳5ヵ月女児Mちゃん
「お茶ちょうだい」「おしっこ出る」「これ要らない」と二語文までですが、ごっこでは「アンパンマンぎりぎりだ」「うるしゃい」など台詞せりふを言ってキャラクターに成ります。
“図星を言う・図星を言ってから叱る”1)を母に説明しました。
3歳6ヵ月
会話が増え、母が「お父さんどこ?」と訊くと『お仕事』と答えました。母が車でスピードを出すと「気を付けて」とおしゃまに注意して来ます。
成り切り遊びは一人で何役もこなし、進歩しました。
3歳8ヵ月
筆者が「おはよう」と声掛けすると児は『知らない』と言いました。母には「憎まれ口はブラックユーモアです。大人が言う普通のなごやかなユーモアはホワイトユーモアです。毒舌どくぜつ皮肉はブラックユーモアに相当します。ブラックはホワイトより相手の反応が大きいので子どものユーモアの発達はブラックから始まるものです。ブラックを言って来たら大人はボケて、こう言う場合が今度あったら『聞こえなかったんだ、知らなかったんだ』と皮肉を言って、ユーモアある会話を育てるのが良いのです」と解説しました。
自分流の替え歌で色々に歌っています。「替え歌は音楽的才能を基盤とした上で言葉のバリエーションを増やしているのです」と誉めました。
“お話しタイム”1)をお教えしました。
3歳11ヵ月
「どっちが大きいかな?」とクイズを出して来ます。「ご飯食べた、サンドイッチが美味しかった、御馳走様」と礼儀正しく言いました。
母は「“お話タイム”をやってた所為せいか、幼稚園の出来事を良く話します」とおっしゃいました。
4歳1ヵ月
自分が先生に成って絵本を母に読み聞かせる先生ごっこに進歩しました。先生ごっこは人の面倒を見る意識の表れでもあります。
4歳3ヵ月
自分の塗り絵を見ながら「お母さん、これMちゃん上手に描いてるよ」と自慢しました、また「ああ間に合った、おしっこして完璧かんぺき」と難しい言葉で自慢しました。「違うね、間違っちゃったね」と間違い概念の理解を披露ひろうしました。「~みたい」と比喩も発します。
4歳7ヵ月
スーパーでトイレが一杯だった時「お母さんトイレ上にもあるよ」と教えてくれました。
4歳9ヵ月
「どうして?」「どうやって?」と質問ブームに成り、科学思考が始まりました。
4歳11ヵ月
父にやってもらえた時、「助けてくれてありがとう」とお礼を言えました。
5歳3ヵ月
「Mおしっこして来た、すごいでしょ、5歳だから」と自慢話が長く成り、母が立って食べていたら「ちゃんと座って食べなさい」とおしゃまに小言を言いました。書ける字も増えました。
5歳7ヵ月
絵本を声に出して読み、トランプのルールを父母に説明し「お父さんは配る」など仕切ります。
5歳9ヵ月
新しい言葉を聞くと意味をいて来ます。
6歳2ヵ月
「~君休んだ、風邪ひいたかな」「~は縄跳び2回飛べるんだって」と友達の噂話をします。「どうしてお母さん女なの?」と答えに困る質問をして来るように成ったとの事で、筆者は「当たり前の事に疑問を持つ知恵は大したものです」とめました。
6歳6ヵ月
普通級に就学し問題無く、当院は卒業としました。

9.3歳5ヵ月H君
言葉は「パパあっち行こう」「H、2階で寝るの」「わあ、雪いっぱい、ゴンゴン(=汽車)ストップいやね」などで助詞が少なく、「~みたい」はまだです。汽車を「コンコン」と言うH君語があります。
成り切り遊びでは「Hアンパンチ、パパバイキンマン」と言って父を叩き、父が『痛い』と言うと「パパ メッ バイバイキン」と言います、
父母に“図星を言う・図星を言ってから叱る・H君語辞書を作る”1、3)を説明しました。
3歳7ヵ月
図星を言ってから明らかに言葉が増え、H君語も増えました。親が間違うと「違うよ」と指摘してくれます。“お話タイム”1)をお薦めしました。
3歳10ヵ月
「まいっかい(もう一回)行く」と意欲を伝えて来ます。その日の事を順序立ててH君語も含めて良く話してくれます。発音がはっきりして来てH君語から日本語に近いのが増えました。「これ何?」「これどこ?」「どうしようかな?」などいくつもの疑問詞を発して考えるように成りました。
「H仮面ライダー、パパ犯人」と役付けし、鬼ごっこでは「パパ逃げて」と指導します。
4歳2ヵ月
「~みたい」と直喩を言い、「女の子怒られてた」と過去を語るのが増えました。「パパ、~?~?」とクイズ風に言います。服を着ないので母が「自分でできるでしょ」と言ったら『服がかたいから』と言い訳しました。「甘えたいの」と言ってこびを売るように成りました。
4歳6ヵ月
保育園の事をいろいろ教えてくれます。
4歳 11ヵ月
「何だこりゃ、パソコンで調べるよ」と自問し解決方法をアピールしました。母が「歩いて行こう」と言ったら、『足ぶつけて動かない』と嘘をいたと母は低い評価をしましたが、筆者は「嘘と言うより、それなりに理屈をねられるように成ったと考えた方が良いでしょう」と良い方向の解釈を母に解説しました。
5歳2ヵ月
「何かイライラする」と自分の心を表現し、「話したい事が多過ぎて上手く言えない」と言って自分を怒るとの事でした。
これらは自己対象化能力、つまり自分を外側から見る他者視点の発達のあかしですから大変
素晴すばらしいですと母に伝えました。
5歳5ヵ月
うるさいくらい良くしゃべり、字を盛んに書いているそうです。
母に「言葉はもう大丈夫です」と告げ、卒業としました。

10.3歳5ヵ月J君
「ママ来てえ」「ママあーぼー(遊ぼう)」「テービ(テレビ)たあい(見たい)」などJ君語と二語文までです。
戦いごっこでは相手をった振りした後 ジェスチャーで相手に倒れるように演出するとの事で、視覚からの情報収集と動作性の知恵は大丈夫でした。
母には“J君語辞書を作る・図星を言う・助詞の言葉掛け”1,3)を説明しお教えしました。
3歳6ヵ月
「いーちゃい(もう一回)」「いーかあ(できた)「いーこー(成功)」などJ君語が増えて「ママ○○ちょうだい」と三語文が出ました。
3歳8ヵ月ヵ月
「あてて(開けて)」「まんまんちぇ(頑張って)」「いーたい(やりたい)」とJ君語が更に増えましたが、助詞「て」が出ました。“叙述のし合いっこ”1)を母に説きました。
絵本の字をたどたどしく読みます。筆者は「言語を聞いて理解してしゃべるより、文字を見て理解してしゃべる方が得意だからです。“好きこそ上手なれ”ですから絵本読みを大いに進めて下さい」と母を励ましました。
3歳9ヵ月
「ママガム下さい」「J一人でできる」と三語文が増え、「もうちょっと」と副詞も二つ使いました。「何?」の質問が増えたとの事で“お話しタイム”1)をお薦めしました。
3歳11ヵ月
日常会話は問題なく成りました、卒業としました。

11.3歳5ヵ月女児
「これ見て」「これ何」など二語文メインですが、助詞は「と」「も」「て」が出ていて、「何でこうなるの?」の疑問詞三語文、「おいしそう」の比喩が出ています。料理ごっこでは役割交代に応じます。
“図星を言う・図星を言ってから叱る・助詞の言葉かけ”1)をお勧めしました。
3歳6ヵ月
助詞が増え「の」「は」「が」が出ました。「ごめんね」と謝れます。特定の子と遊び、その子の真似をするとの事で母に社会的学習の説明をしました。
社会的学習とはことわざ「人の振り見て我が振り直せ」の事で、子どもは4歳過ぎると、親や大人からの学ぶ、から、仲間から学ぶ、に発達するのが普通です。
“叙述の仕合っこ”1)をお教えしました。
3歳9ヵ月
おしゃべりが増えて「どこ」「いつ」と疑問詞、「~みたい」「に」も出ました。「お姉ちゃんやるから」と言って妹に靴を履かせます。「おしまい」と母が言うと『ブップー』と不満を表出しながらも片付けます。母が間違えると「違うよ、~だよ」と訂正したり、「早くしろ」と命令します。“お話タイム”をお薦めしました。
3歳11ヵ月
アニメおしり探偵たんていの影響でお尻を出してお道化どけます。「えーとえーと」が目立ちます。
4歳1ヵ月
母になぞなぞを出します。言葉は大分心配なく成りました。
4歳4ヵ月
母の口調をまねして父に「それやっちゃダメでしょ」と説教したり、妹の面倒も見ます。これらは多くの4歳児が発揮する指導意識の表れです。
4歳8ヵ月
お友達の名が結構出ます。母にクイズを出します。文字を読むとの事で“読ませき”をお教えしました。
“読ませ聞き”とは、子どもが文字を読むように成った段階で親が聞き役に回って子どもに絵本を読んでもらい、読んでもらったら「成るほど、〇〇ちゃん(君)のお陰ですごく良く分かったよ、面白かったよ。また読んでね」などと大いに褒めてまた読んで上げようと言う意欲を育て、文字からの言語学習を経て言葉を豊かにする筆者方式の方法です。
リュックに物や玩具を詰め込んで背負って歩くとの事で、4歳児はよくそうしてどこでも自分の財産を確保しようとします、と説明しました。
4歳11ヵ月
自分で考えて言うように成り、母が「どうしたらいいかな?」と言うと『~したらいいんじゃない』と提言してくれます。幼稚園の出来事報告も増えました。
卒業と成りました。

12.3歳8ヵ月女児
「ママスプーン使って食べたよ」「これやって」「二つまでね」などで多語文が少ない状態です。成り切り遊びでは「赤ちゃんに成っちゃった」と言ってハイハイしたり、レジごっこで母をお客にさせます。
母に“図星を言う・図星を言ってから叱る”1)をすすめました。
4歳1ヵ月
「でもねえ、かけっこ一番だよ」など多語文が急に増え、「例えば~」とレベルの高い比喩を言い出しました。
「パパは一人で良いの」と指導し「パパ何とかしてよ」と依頼、言語コミュニケーションが上手に成りました。
4歳8ヵ月:
特に心配はありません。
6歳6ヵ月
久しぶりの受診、普通級に就学後1ヵ月、問題はありません。

13.3歳8カ月K君
「~みたい」「もしかしてこれなの」「捨てちゃったらもうダメ」「これ折っちゃったらどうする」「何」「誰」「なんで」など直喩、仮説、疑問詞が出ていますが、「例えば」と過去を語るのはまだです。役付けに応じて成り切りますが母に役付けするのはまだで、発語もごっこ遊びもゆっくりです。
母には“図星を言う・図星を言ってから叱る”を勧め、「ごっこでの役付けをK君がするように仕向けて下さい」とお願いしました。母は大いに納得しました。
3歳11ヵ月
母は「先生がおっしゃってた通りにしてたら、すごい話をするように成りました」と述べました。母が失敗したら「やーっちゃったあ、やーっちゃった」と茶化して来ました。やりたくない時は「やりたくねええ」とユーモアたっぷりに言います。
4歳3ヵ月
「~ちゃんお休みで遊べなかった」と過去を語りました。絵を描いて「これ何でしょう」とクイズを出します。ごっこでの役割交代は可能に成り、「これ付けたら女の子に成っちゃう、女の子だったらどうしよう」と葛藤表現しました。
4歳7ヵ月
お話し上手になって心配なく成りました。平仮名をいくつか書き、一桁の足し算が出来ます。
その後3年4ヵ月、受診はありません。

14. 3歳9ヵ月男児
「パパおうち帰って来ないね」と居るべき人が居ない事を叙述します。「~みたい」の比喩、「と、も、の、て」の助詞を言います。
カ行がタ行になるカ行吶どつ(カ行吶については発達研究センター報告43「続・音韻の発達~音声学・音韻プロセス・音韻練習・その子語の研究~」7)をご参照下さい)の音韻未熟があります。
戦いごっこでは役を仕切れます。
母には“図星を言う・図星を言ってから叱る”1)を薦めました。
3歳11ヵ月
「~が~するからダメだ」と論理的に批判しました。
4歳1ヵ月
下の子に「ダメだよ、拳骨げんこつされるよ」と注意しました。が、これは叩く躾をされている事を示唆しさします。
母が怒ると「ママ怒って可愛い」と皮肉が入ったお世辞を言って身を守ろうとしました。中々の知恵者です。
4歳6ヵ月
「違う」と想定外を表現し、「気に成るから貸して」と心情を表現し依頼しました。また「蹴って耳に当たった」「公園で遊んだ」「~君と~して遊んだ」と過去を語りましたので、母には“お話タイム”1)を勧めました。
5歳
「例えば~」とレベルの高い比喩を言い、会話には困らなく成ったとの事で卒業と成りました。

15.4歳1ヵ月男児M君
「次」「終わり」「こしょう」など一語のみで、「ほーよー(おはよう)」とM君語1、2)があります。食後「ごちそうさま」と言って父の皿を片付けるお手伝いができます。言葉は2歳前の一語段階ですが、ごっこは2歳過ぎにする見立てをします。1~10を数え、友達の名札を読み、平仮名で自分の名を書きます。
父母には聞いて考えるより見て考えるのが得意な子と説明し、“図星を言う・図星を言ってから叱る・M君語辞書を作る”1、2)を薦めました。
4歳4ヵ月
電卓を叩いて「オッケー」「バツ」など言い、「危ないよ」と抽象語、「見て」と助詞「て」、「~だから~です」と論理的に言いました。
4歳9ヵ月
ビルを見て「お城」と隠喩いんゆを言いました。
5歳
電卓を操作しながら「ごかけご」と掛け算した様子がありました。筆者の聴診器を手にして「もしもししよう、背中お腹」と成り切りをしました。
5歳3ヵ月
「お母ちゃんが作る」と指示的に言いました。
5歳9ヵ月
足を見せながら「ここぶつけた」と母に報告しました。「ありがとう」とつぶやきながら平仮名で書きます。
6歳
「ここが出来た」と言いながらパズルをします。母に「9足す5は?」と問題を出します。
6歳4ヵ月
支援級就学後1ヵ月、WISC-IIIではIQ90(動作性IQ96、言語性IQ86)でした。
6歳9ヵ月
「これなあんだ」「何故こうなってるの」と疑問詞を言い、四桁計算が可能です。
12歳4ヵ月
WISC-IVではFIQ111(言語理解指標103、知覚推理指標122、ワーキングメモリー指標103、処理速度指標102)に大幅アップしましたので、中学は普通級検討と成りました。

16.4歳2ヵ月K君
「おっきい」「パパー(パトカー)」「ごみちゅうちゅうしゃ(塵収集車)」とK君語もある一語段階ですが、戦いごっこレジごっこで成り切りは可能です。
母に“K君語辞書を作る・図星を言う・図星を言ってから叱る”1、2)を薦めました。
4歳4ヵ月
「はいぽおぷ(大丈夫)」「ないない(しまう)」「いいたあす(いただきます)」「バキなった(壊れた)」と多彩なK君語が増えました。
「こないだ保育園で爺ちゃん婆ちゃんの所(老人ホーム)に行った」と日本語で経験を話したとの事で、母には“お話しタイム”1)を解説し勧めました。
4歳5ヵ月
「K黄色い剣持つから」とお遊戯ゆうぎ会でする事を説明し、言葉を間違えた時に「違った」と言って自己対象化でき、「ママ~みたいだね」と比喩を言いました。
4歳7ヵ月
大分しゃべるように成り「ママあっき(友人の名)と同じ靴欲しい」と多語文で要求し、「Kの一個上げるから一個ちょうだい」と取引きし、「~ちゃん泣いてた」と友達の観察報告をしました。
母が「言葉がポンと増えてもう安心です」と述べましたので、筆者も同意しました。

17.4歳4ヶ月Y君
「よんしゃい(4歳)」など音韻未熟があり、「~みたい」は言いますが「例えば」はまだ、「もしも~」と仮説を立てるのもまだです。言いたい事を上手く言えない時に母が「~なの?」と質すと『そうそれ』と言う会話です。お友達に「何でYは分からない事言うの?」とよく言われます。友達の事は「~ちゃんが~した」と言う段階です。ごっこでは友達に役付けできます。
母には“図星を言う・叙述のし合いっこ・お話しタイム”1)をお教えしました。
4歳6ヵ月
母は「言われた事をしたら笑っちゃうくらい良く成り、『お母さんみたいにやって』と父に比喩を使って依頼しました。保育園の事を時系列で話せるように成りました。楡の会を受診して関わり方を教わってから言葉が増えたと保育園の先生に言ったら『やはり専門家だね』と言われました。普段の生活でもやれる事が増えてびっくりしてます。“お話しタイム”は本人がしようと誘って来ます」と笑顔でおっしゃいました。
4歳7ヵ月
「~ちゃん怒られてた」「~君といっしょにやったよ」「~今日来なかった」など友達の事を色々報告するように成りました。これはマンウォッチングする社会的学習の進歩と母に説きました。
因みに、社会的学習とはことわざ「人の振り見て我が振り直せ」の事で、子どもは4歳前は “親や大人から学ぶ”ですが、4歳過ぎるとから“仲間から学ぶ”に発達するのが普通です。
4歳9ヵ月
「えっ何で?」とよく疑問詞を使います。保育園で彼女が出来てその子の事を盛んに話題にし、その子には「Y君と結婚する」と言われているそうです。
母にもう言葉の心配はないと告げた所、母も同意しましたので卒業としました。

18.4歳6ヵ月Y君
「~みたい」は言うが「例えば~」「もしも~」はまだです。戦いごっこでは役を言葉で仕切ります。
“図星を言う・図星を言ってから叱る”1)を母に説きました。
4歳8ヵ月
「ちょっとA遊び過ぎ」と妹に向かって注意しました。“お話しタイム”1)を母にお教えしました。
4歳9ヵ月
幼稚園の事を訊けば「~のお母さん来たよ」「~が休んだよ」など教えてくれます。
「いや」が多くなりなかなか言う事を聞かなくなったとの事で、“良い子のYに成ったね”(これについては、こどもクリニック通信26号「良い子の○○どこ行ったあ?」をご参照下さい)を母に勧めました。
4歳10ヵ月
母は「“良い子のYに成ったね”作戦の効果があって聞き分け良く成りました。言葉も増えてます。」と述べました。
気持ちの切り替えが遅く予想外に会うとオロオロするとの事で母に“二つ先のアナウンス”3)を勧めました。
4歳11ヵ月:
母が“二つ先のアナウンス”をしたらオロオロがすごく減りました。
5歳2ヵ月
「~だから~しない」と理屈を言っての抵抗が増えました。幼稚園の先生に上手にしゃべるように成ったと言われました。
5歳5ヵ月
決まりを守らない子に「間違ってるよ」と注意しました。
5歳9ヵ月
友達に「~したら上手く行くよ」と教示しました。
6歳1ヵ月
幼稚園での困った事を隠す時は変な笑い方をするので母には分かります。
6歳5ヵ月
普通級入学後2ヵ月、問題は全くありません。卒業です

19.4歳8ヵ月H君
「~君と遊んだ」「おいしそう」、「昔々~~」と一人でしゃべっていて母に話が分かる所と分からない所があります。「ちゅうちゅうた(救急車)」「ちょうぼうた(消防車)」とカ行吶どつ、サ行がタ行に成るサ行吶6)があり、H君語が多いです。「~みたい」の比喩はまだです。ままごとで「お父さんやって」とファミレスごっこでは「お客さんやって」と役付けします、
母に“H君語辞書作り・図星を言う・図星を言ってから叱る”1,3)を薦めました。
4歳9ヵ月
良くしゃべるように成り「~みたい」が出ました。「ママ大好き~~」と言う自作の歌を歌います。母に“お話しタイム”1)を薦めました。
4歳11ヵ月
通じる言葉がグッと増え、「~君と追っ掛けっこして先生に怒られた」など経験を色々語ります。
5歳2ヵ月
聞き取りにくいのは無く、幼稚園でもちゃんと会話できていて、帰って来ると友達が何したかにしたと教えてくれます。かるた、尻取りをよくしています。
母はもう心配していません。卒業としました。

20.4歳10ヵ月女児Tちゃん
「ご飯食べる」「お姉ちゃん見て」「~が」と二語文助詞の段階で、「プー(スプーン)」
「バババ(バナナ)」「こえ(これ)」とTちゃん語と音韻未熟があります。成り切り遊びは可能です。小1の姉の勉強の姿を見て、平仮名を練習して自分の名を書けます。
母に“Tちゃん語辞書作り・図星を言う・図星を言ってから叱る”1、3)を薦めました。
4歳11ヵ月
書ける字が増えるに連れて言葉も増えました。
5歳2ヵ月
発音不明瞭なTちゃん語で友達に一生懸命話し掛けます。
5歳11ヵ月
「~ちゃん休みだった」「~ちゃんキティちゃん好き。上げたよ」と過去を語ります。漢字で自分の姓を書きます。
6歳1ヵ月
レストランごっこで「いらっしゃいませー」「はいどうぞ」と日本語で店員を演じる事もあります。
6歳5ヵ月
「たのかった(楽しかった)」「めあに(めがね)」、「ぶらことてて(ぶらんこ乗せて)」などTちゃん語が尚ありますが、発語が通じないと五十音表を持って来て仮名を順に指して伝える知恵を発揮しています。数は20まで数えます。
8歳7ヵ月
普通級小2に成ってTちゃん語は既になく、日常生活に支障はありません。卒業としました。

VII.言葉とごっこ遊びの発達水準

20人中18人90%の子ではごっこ遊びの発達水準が言葉の発達水準より進んでいました。
従って、言葉の発達が遅れていても、ごっこ遊びの発達が順調であれば、適切な言語療法によって言葉の遅れは挽回し得る事が示唆されました。

VIII.考察

ごっこ遊びは知恵遊びです。ごっこ遊びは知恵つまり創造力を動作で発揮する遊びだからです。
人間は知恵を言語で表現する方法と動作で表現する方法の二つを持っています、二刀流です。
言語には聞き話すの言葉と読み書くの文字があります。言語も二刀流です。
子どもは普通1歳過ぎから意味が通じる日本語言葉を発します。
子どもは普通4~5歳前では言語は耳から聴覚を介した言葉として理解した上で言葉を発します。つまりまだ一刀流です。そうして4~5歳過ぎの頃からは目から視覚を介して文字言語を読む方法でも言語を習得し言葉を発するように成ります。こうして二刀流に成長します。
人間誰でも多かれ少なかれ得手えて不得手ふえてがあるものです。オールマイティつまり何でも物凄ものすごく上手な人は滅多めったにいません。
上記20人の内の9割の子は1~4歳の頃は知恵を表現する方法としての言葉は苦手にがてでしたが、もう一つの知恵を表現する方法である動作性表現つまりごっこ遊びは言葉に比べて得意とくいでした。ですから、知恵は心配なく、来院時はいわゆる口下手くちべたタイプだったと言えましょう。
言葉が苦手だった段階で親に“図星を言う”をされて真似し易い手本を示された結果、耳からの学びが進んで言葉の遅れを挽回できたと言えましょう。
挽回の仕方は色々で、図星を言われてから直ぐに挽回し始めた子、遅れていた爆発期が急に来た子、徐々に挽回した子、12歳に成って大幅に知的に伸びた子、などなどでした。
いずれにしても“図星を言う”が有効な言語療法である事が示唆されました。
尚、卒業とした子らのその後の受診はありません。また、20人に言語聴覚士の関与はありません。

XI.引用ホームページ

1)こどもクリニック通信2号「言葉遅れのある子の言葉を促す方法、教えます」
2)発達研究センター報告41「3歳前は言葉が遅れていたけれど“図星を言う”など楡式言語療法で良く成った子ら49人」
3)発達研究センター報告42「R君の“その子語”~R君語から日本語への発達過程」
4)こどもクリニック通信26号「良い子の○○どこ行ったあ?」
5)発達研究センター報告40「自由奔放傍若無人だったけれど我慢できる良い子に成れた子36人」
6)こどもクリニック通信8号「『落ち着き無い衝動的』への対処法、教えます」
7)発達研究センター報告43「続・音韻の発達~音声学・音韻プロセス・音韻練習・その子語の研究~」