きらめきの里・園だより≪エピソード集≫2017~18年度 (4) 2017年11月号・12月号より
2019.10.01

臨床発達心理士 田野準子

楡の会・発達支援センターきらめきの里の園だよりに掲載されたエピソードをまとめました。上手く行ったお話が満載です。

~2017年度~

★11月号 今月のエピソード

1・わかり易い工夫で、兄弟喧嘩も起きなくなる!Aくんのママの上手くいった!
最近、A君と1年生のお兄ちゃん(B君)は、ブロックと折り紙が共通の好きな遊びになりました。B君は、ブロックも折り紙も全部自分で使って遊びたくて、弟のA君に分けてあげることができません。二人の喧嘩が絶えなくてママは大変!!
 そこで、今までのブロックとレゴで別々に遊ぶことができるかも・・・とレゴを買いました。ところが、二人ともレゴで遊びたい!とまた喧嘩が勃発!・・・そこで、ママはレゴの2つの箱の上に穴を空け「こっちはA君、こっちはB君の!」と箱に名前を書いて『自分の分』をわかり易くして渡すと、喧嘩が起きなくなりました!それじゃあ、折り紙も・・・と二人の名前と顔の写真を貼ったファイルに折り紙を分けて入れて渡すと、何と喧嘩せずに、同じ遊びを楽しめるようになったそうです。

2・感情的に怒ってしまっても、親子の信頼関係の土台がしっかりできていれば・・・
受容的な関わりを継続しているCちゃんのママのお話です。Cちゃんのお兄ちゃん(D君)は1年生。知恵もつき我も強くなってきたD君に、ママがつい感情的に強く怒ってしまった夜・・・寝る前にママが「あんなに怒らなくていいのに、怒ってごめんね・・・」とD君に伝えると、翌朝、D君は起きるなり「ママ、怒らせてごめんね・・・。」と謝ったそうです。今まで十分にママに受容されてきたD君は、ママの気持ちも受け止める事ができるように育っています。

ママと子どもの信頼関係の基盤(土台)ができていれば、ママが思わず感情的に怒ってしまってもフォローすれば、子どもはママの気持ちも理解できるように健やかに育ちます。今!『安心と信頼』の土台を作りましょう!   

★12月号  今月のエピソード

(Ⅰ)代替品で満足・・・積もりを作る。
降園時に、園バスに乗りたくて、毎日園バスが出発するまではバスの近くから離れる事が出来なかったMくん。バスが出発してしまうと『バスに乗りたかった』と、毎日お母さんと乗ってきた車に乗るまで15分程かかっていました。担任は園バスにMくんの写真を貼ったバスカードを用意し、お母さんに「Mくんが『バスまだ見たかった』『バスに乗りたかった』という時に渡してね」とカードを渡しました。
次の日、Mくんが『バス行っちゃった』と泣き崩れた時に、お母さんは「まだバス見たかったね」とMくんの気持ちを受け止め代弁しつつ「バス見ながら帰ろうか」とMくんにバスカードを差し出しました。すると、Mくんはそのカードを見て指差し笑顔に!そこですかさずお母さんは「Mくんのバス(車)に乗ってお家に帰ろう!しゅっぱ~つ!」と声をかけ、代替品のバスカードでMくんの満足を作り、Mくんの気持ちを上手にのせて車に乗る事が出来ました。
 今では、バスが出発するまではMくんのバスを見る時間に十分に付き合い満足作りを行いつつ、園バスの出発時間が近づくと「Mくん、今日は黄色バス待て待て~して帰ろうか!」と気持ちを切り替える声をかけ、バスカードがなくても車に乗る事が出来るようになりました!
Mくんの気持ちを十分に受け止め、お母さんのペースに上手にのせているお母さん!ステキです!

(Ⅱ)楽しいお手本を見せて気持ちの切り替え・・・好きな事で乗せる。
公園遊びの活動で『歩きたくない』『抱っこして』と座り込みをしてお母さんにアピールするKくん。でも、公園では元気いっぱいで走って遊べるのをお母さんは知っています。そんなKくんにお母さんは公園までの道のりを「歩いてほしいな~」と思っていました。
 ある日、座り込みをしているKくんに担任が「あるこ~あるこ~♪」「チャンチャンチャンチャン♪」とリズム体操の歌を歌いながらKくんの手を繋いで誘うと、楽しそうに歩き出すKくんの姿を見て、お母さんは「楽しいと自分で歩くんだ!」とつぶやきました。
 そして、数日後療育で裏山に行った時に『歩かない』と座り込みをしているKくんに、お母さんは「見て見て~」と言いながら楽しそうに足で落ち葉をガサガサ踏んで見せ「楽しいよ~Kも一緒にやろう」と誘い掛けました。すると、お母さんの楽しそうな姿を見てKくんも真似を始めました。「真似っこ」「落ち葉」がブームのKくんをお母さんが上手にのせて、Kくんは自分で歩く事が出来ました!Kくんのブームをうまく使い、Kくんをのせたお母さん!さすがです!

・・・(Ⅰ)(Ⅱ)は、いちごクラス担任 阿部先生が寄せてくれたエピソードです。

(Ⅲ)5分でOK!・・・満足作って親子で笑顔。
給食後、ホールで毛布に乗りママに引っ張ってもらって遊んでいた新入園児のSくん。12:30には帰る予定だったので、ママは5分前に「もう帰るからおしまいね」とSくんに言い、クラスに戻り帰る支度をしようとしました。でも、怒ってぐずるSくんを見てママは「まだ遊びたかったんだ。じゃあ、あと5分遊ぼうか!」と言ってホールに戻り、Sくんを毛布に乗せて楽しく遊びました。5分後、Sくんは満足の表情で、ママと手を繋いで笑顔で帰ることができました。(たった5分。されど5分!)ママは短期間に楡の療育の意味を理解し実践し、朝の体操もSくんはママと手を繋いで参加できるようになりました。家ではお姉ちゃんとの順番を待つときに『順番待ちの歌』を歌っているそうです。Sくんのママ素敵です!

(Ⅳ)待つ事は育てる事・・・なんでも自分で!の葛藤の時期。
何でも自分でやりたい時期のMちゃん。朝、着る服も自分で選びます。「これにする、あれにするって、ボタンが小さくても『自分でボタンする!』って頑張るけどできなくって癇癪起こして・・・。『手伝おうか?』って言っても『いや!』って言うけど、最後は『手伝って~』って・・・(笑)。朝忙しいのに30分以上かかるんです。バスの時間があるから大変ですけど、頑張ります!」と明るく微笑むママ。Mちゃんは、たっぷりゆったりママに受け止められて、順調に健やかに育っています。『自分で!』の時期は大変ですが、これを保証してあげることが子どもの育ちにはとても大切なのです!Mちゃんのママ頑張って!