きらめきの里・園だより≪エピソード集≫2017~18年度 (7) 2018年7月号・8月号より
2020.01.04

臨床発達心理士 田野準子

楡の会・発達支援センターきらめきの里の園だよりに掲載されたエピソードをまとめました。上手く行ったお話が満載です。

~2018年度~

★7月号 今月のエピソード  あっぱれ!お父さん、お母さん  れもん編

1.ママにいっぱい褒められて・・・ピカピカ☆出来るようになってきました!
お母さんが「以前は給食を全然食べてくれなかったんです。」と言うMちゃん。入園から1年経って、今では(今日は食べない!ヤダ!)とアピールしながらも、好きな物はおかわりして食べたり、お皿がピカピカ!の日もあるようになりました。お母さんが、ゆっくりとMちゃんのペースに合わせ、一口食べたら手で「〇」を作ってMちゃんを褒め、「やったね!食べれたね!」と、Mちゃんができた事を褒め続けてきたので、Mちゃんの中で「食べられた!出来た!褒めてもらえた!」と言う満足・達成感が積み重なり、今の姿になったのですね♪粘り強くMちゃんに付き合ってきたお母さん、あっぱれです☆

2・ダメを言わず、それよりもっと楽しい遊びに誘って・・・お父さんもニッコリ
絵具遊びの時・・・今はまだ、手で触り目で見て、更に口に入れて確認をしたいSくん。最初はお父さんも「あ~。食べちゃだめだよ。」と言いながらSくんの絵の具がついた手を口から離していました。担任がSくんの手をとり、一緒に手全体や机に絵の具を塗り「楽しいね」と声掛けながら遊んでいるのを見て、お父さんは「Sくん、絵の具落ちるよ。ポト~ン。」と上手にSくんを楽しい遊びに誘いました。Sくんがお父さんの誘いに声を上げながら喜んでいる姿を見て、お父さんもSくんに「楽しいね。」と言いニッコリ。お子さんが何でも口に入れて確かめたい時期は「ダメ!」と言いたくなりますが、「ダメ」を言わず「この遊びの方がもっと楽しいよ!」とSくんの気持ちを上手に遊びに向けたお父さん、素敵でした☆

3・ボクの歩きたい気持ちを叶えるために・・・お母さんの努力の継続は、ボクの力に
足の裏を床につける感覚が苦手なTくん。でも、歩きたい気持ちはいっぱい!お母さんはTくんと手を繋いでお散歩する事を目標にして、日々頑張ってきました。朝の体操やTくんが立ちたいと思った時には、足が床につくようにそっと手のひらで包み込んだり・・・Tくんの足の裏が床の感覚に慣れるようにと、様々な方法で頑張ってきました。そして、今では片手を繋ぐだけで、Tくんは自分の足でしっかりと歩けるようになってきました!お母さんが、毎日継続して努力し、Tくんもそれに応えて頑張った成果です☆

4・ママがいっぱい安心を作ってくれて、褒めてくれて・・・分離の時間の不安を乗り越えました~
入園し、初めての母子分離を経験したNちゃん。「自宅で私の後を追い、姿が見えなくなると泣く事が増えたので、休憩に行く事をやめようと思う。」とお母さんから話がありました。担任は、お母さんの休憩中、お母さんの姿を探し泣きながらもホールに出ている玩具を見たり、友達の遊ぶ様子を見ているNちゃんの様子をお母さんにお伝えし、『休憩に行く前のNちゃんの安心作りのため抱っこと声掛け』と『休憩から戻った時の満足作りの声掛け』などをお伝えしました。その日、お母さんは休憩前にNちゃんに「ママほっぺ行ってくるね。待っててね。」と声掛し、ぎゅっと抱っこしました。担任が「Nちゃん、ママにいっぱい抱っこしてもらって安心したね。ママは、ほっぺだから、先生と遊んで待っていようね。」と言い手を伸ばすと、Nちゃんは泣かずに担任の抱っこに応じる事が出来ました!Nちゃんは、ママが「待っててね。」と言って抱きしめてくれて安心し、泣かずに待つ事が出来たのでした。帰って来た時、「待っててくれてありがとう!Nが待っててくれたから、ごはん食べられたよ!」と笑顔でNちゃんを抱っこするママと、ママに褒められて嬉しそうなNちゃんの姿・・・とても素敵でした!  

★8月号 今月のエピソード  『“図星を言う”の三つの効能』

“図星を言う”は子どもに”分かってもらえてる感”を作れるのが第一の心理効果です。第二には子どもの言葉の発達を促がします。(中略)思い通りにしゃべるのが苦手な人つまり口下手な人が図星を言われたら「そうそう、それそれ、そう言いたかったんですよ」と思って「次からはそう言えばいいんだ」と言語学習が進むことに成ります。第三は他者視点の発達を促します。(中略)自分を外側から見る能力の発達は自分で自分に言い聞かす能力即ち我慢の発達を促します。多くの4歳児には我慢する知恵が備わります。(中略)”図星を言う“は、分かってもらえてる感、言葉、他者視点、の三つを促進します。~『子育て親育ち読本Ⅱ』6頁より~

・・・新年度が始まって、4ヶ月。ぐんぐん成長中の子ども達!『図星を言う』を理解し、実践している多くのお母さんたちは、その効果を実感しています。上記の『子育て親育ち読本(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)』には、楡の会の療育の理論の説明と効能、そして数々の実践事例が満載です!全職員が購読し支援の指南書としています。読み易く、纏められていますので、お手元において『親力アップ』のための手引き書 として、是非ご利用下さい。

1・親力アップで『子どもを手のひらに乗せてる感じ』ができちゃった!
『通園に通う弟同様、否定しないように!』って、わかっちゃいるけど、兄にはダメ出ししちゃう~と悩んでいる多くのママ・・・の一人であった新入園のAくんのママが、『図星を言う』を実践し、お兄ちゃんにも受容的な関わり方をするよう頑張りました。そのAくんのママが実践報告してくれた時の、ママの言葉をご紹介します。
 「お兄ちゃんが「抱っこして」と来たら、忙しくてもギュって抱きしめるようにしてるけど、やっぱり忙しくてイライラの時は、やっぱり「ホラ!~しないとダメでしょ」って言ってしまう。でも、昨日は、そうしないように努力したら、すっぽりはまった!全部うまくいったんです!朝、本当は買い物してから楡に来たかったんだけど、お兄ちゃんが幼稚園行かない~と言い始め、机の下にもぐったんです。いつもなら「ホラ!急いで急いで!」と怒るところを「行きたくないんだ。そうか~じゃあ、お母さんが抱っこしてあげようか。来るかい?」と言ったら、お兄ちゃんは「ママ、抱っこ~」と机の下から出てきて、私は怒らず、お兄ちゃんはすんなり幼稚園に行けたんです。やっぱり自分・・・母親の自分の声かけ次第。いつも余裕があるわけではないけど、今日は「買い物もいいや~買い物行かないで材料がなきゃ、あるもので作ればいいや~」と思って自分の予定を変えたら、すっぽりはまってくれて「ヤッター!」と思ったんです。意識しないと難しいけど、これが普通にできるようになったらいいんだろうな~って思いました。」・・・そして、その3日後、ママから聞いた言葉は・・・

 「・・・頑張って図星を言って受け止めてます。お兄ちゃんも私の言う事に応じてくれるようになったし、私が楽になりました。声かけで、こんなに違うんだな~って、実感だし、こう~、手のひらに乗せてる感じがします・・・。」

 『実践すれば、必ず子育てが楽になる』『(釈迦が悟空を掌に乗せる様に)ママの掌にお子さんを乗せちゃう』・・・ママ達に私がいつもお伝えしていることです。Aくんのママは、わかっちゃいるけどなかなかできなかった、お兄ちゃんへの関わりを変えようと努力をして、それが実感でき、ママ自身も満足感、達成感を得ることができました!Aくんのママ!最高に素敵です!!
 
2・自己説得できると楽になれる!
今まで、『図星を言う』と数多くの工夫で『上手くいった実践例!』をいっぱい!!作ってきたBくんのママの、Bくんのお兄ちゃんであるCくんとの素敵なエピソードを紹介します。ある日「自分もそうだからわかるんだけど、Cは気圧の変化で機嫌が悪くなるので、本当に困るんです・・・」とママから相談を受けました。ママ自身が「これ気圧の変化だから仕方ないよな~」って原因がわかると楽になれる(自己説得出来る)と感じていることを確認して、理解力のあるCくんにも、機嫌が悪くなる理由を分り易く説明をしてみることをお勧めしました。その1週間後、「Cに説明したら、理解して、この頃毎日、天気予報を聞くようになったんです。今までCの気持ちが崩れて大変だった様な日も「天気が悪いから仕方ない~」「天気悪いの嫌い」と言い、大きく崩れなくなって楽になりました!」とママから話を聞きました。我が子を理解し、信じて分り易く伝えることで、親も子も、家族が楽しく暮らせるようになります。Bくんのママは、それを実践し続けています!なんて素敵なママ!これからも応援しています!