きらめきの里・園だより≪エピソード集≫ 2019年9月号より
2020.08.26

臨床発達心理士 田野準子

 “猛暑・酷暑”と言われた今年の夏も、あっという間に通り過ぎ、楡の会の駐車場の木々も色づき始めています。

ママに「約束したでしょ!どうして守らないの!」と言われたAくんは、怒って近くにあった椅子をひっくり返しました。

・・・『ママはボクの事をわかってくれている人。ママはボクとの約束も守ってくれる。だから、ママのいう事は聞くよ。ボクもママとの約束は守るよ・・・』と、Aくんが思えているか否か・・・。

・・・残念ですが、このAくんは、そう思えていない・・・ダメ出し先行のママに、安心信頼感が、まだできていないから、約束なんて守れないのです。

『あなたの気持はちゃんと分っているよ♥』とママが受け止めて、それを伝えて子どもの心中に“分ってもらえてる感”つまり満足安心信頼感を作り、その上で好ましい行動を作る・・・これが、受容が目指すものです。(子育て親育ち読本Ⅰ 第1節~)

ママが子どもに『わかってもらえている感』を作ることができた時、子どもは聞く耳を持ち、聞き分けの良い、更には、約束だって守れる子に育ってくれます。

人としての土台を作る大事な就学前の時期に、楡に通園している間に、ママ・パパが『好い事作り療法』を理解して、その効果を実感して下さるよう切に願っています。

★★★今月のエピソード★★★

1.★受容が双方向だってことを、証明してくれたBちゃんのママの話・・・♥

「先生~あのね~。」と嬉しそうに話しかけてくれたBちゃんのママ。

「昨日ね、Bがなかなか私の言う事を聞いてくれなかったんです。それで『ママはね、Bの言う事やお願いをいっぱい聞いてあげてるよね~。Bもママの言う事聞いて欲しいな~お願い聞いてくれたら嬉しいんだけどな~』と言ってみたんです。

そしたら、Bはちょっと考えて『いいよ~』って言って、すんなり言う事を聞いてくれたんです!!」と。

昨年度は、ママに『自分の思いを分ってもらえている感』が持てなくて、ママを叩いていたBちゃん・・・

ママは本当に良く頑張ってBちゃんに『ママは私の事を認めわかってくれる人』という気持ちを作ってきました。

ママがBちゃんを十分に受容してきたから、Bちゃんもママの言う事に応じる事が出来る・・・受容の結果、双方向のコミュニケーションが立派に成立したのです。

2.★「今までの私、~しないと~出来ないよ!」と否定文で声かけしちゃってた!と反省したCちゃんのママ

『好きな物の利用』で楽しく「好い事作り」中のCちゃん♥

入園当初、制止やダメの声掛けが多かったCちゃんのママ。

勉強会でも熱心にメモを取り『好い事作り療法』を学んでくれました。

否定の声掛けをしないように心掛け、Cちゃんの好きなシールを使って『好きな物の利用』もやって続けてきました。

Cちゃんが今迄なかなか取り組めなかった事も“頑張ったら、好きなシールを一枚選んで貼れる!”のが楽しみで、頑張れるようになりました!

上手くいかない時もシール無しではなく、半分or四半分にして渡し、「次は1枚貼れるように頑張ろうね!」と言って取り組んできたそうです。

これからもママの頑張りに期待しています!

3.★“分り易さ”を考えた、素敵なDくんのママの話♥

 

初単独の朝バス乗車時。母子共にドキドキの一瞬です。

Dくんのママは、担任がママ達にアドバイスしていた視覚支援の写真の利用を実践。

Dくんが乗車時に「今日はママはお家、Dはお友だちと一緒に(スマホの画像を見せて)園に行きます。行ってらっしゃい~」と、Dくんに説明しました。

また、親子でバスで通園しているので、ママはいつも身に付けているリュックではなく、小さなポシェットを身に付けてバス停に来ました。今までの『いつも』との違いを分り易くし、『今日は単独日!』の目印にする事を考えて・・・。

1人でのバス乗車を渋っていたDくんですが、他のお友だちが乗車し、ママの説明に『仕方がない』と諦めて、泣かずにバスに乗車できました!

(※「仕方がない・まあ、いいか」ができる様になるのは、自己説得ができるようになったと言う事。ママの言葉に聞く耳が作れたと言う事でもあります。成長の証!)

ママの忙しい毎日の中、Dくんの分り易さを考え工夫して・・・。いつも、我が子の安心を作っているDくんのママ!あっぱれです!